星を繋ぐ猫達 第5章 《美しきメッセンジャー》

お久しぶりの更新です。ようやく春の気配がし始めました。私、2月始めに、ひどい風邪をひき、ようやく回復したところです。

そして、風邪で倒れる前日に、仕込んだ味噌の出来上がりを期待しています。


画像は、現在、物語に出ている、画家の門田さんが描いた設定の、ジャッコ博士作品です。「美しきメッセンジャー」2015年個展作品。


※この作品は、個展発表後に、ニューヨークにお嫁入りしていきました。

では、第5章ラストをお楽しみくださいませ。

[第5章 美しきメッセンジャー]

門田さんが取り出したのは、見事な猫の絵です。

猫達は、びっくりです。

「これは…ジャッコ博士…」

チャット博士が、絵に駆け寄ります。

「なぜ…あなたがジャッコ博士を…?ご存知なんですか?」

「一年前かな?猫沢くん達が訪ねに来た辺りの頃に、突然、頭にイメージが浮かんで、描き上げたのさ…昨日、風天さんから、この猫が実在したと聞いて驚いたのさ」

「そっくりです!それに美しい」

門田さんは、驚く猫達を見つめます。

「実はな、不思議な事があったんだ。描き上げた途端、この絵からメッセージを受け取ったんだよ。この絵を託す先を探して欲しいと…私の展覧会ではない場所と指定されたんだがな…そんな所あるのかね?」

門田さんは、謎めいた事を言い始めました。この絵は一体どこへ行こうとしているのか…?

猫沢さんは、ピンときました。

「ならば、きっと私達がコンタクトを取っているサンプルの中に適任がいるはずです。そのテラビトに託してみては、どうでしょう?」

猫沢さんは、静かに門田さんを見つめます。

門田さんは、お茶を飲み終えると、考えるように、静かに目を閉じ胸に手をあて深呼吸をしました。

しばしの沈黙を、猫達は見守ります。

「もしかして…さっきの映像に出ていた燃費の悪い女性か?」

「はい、彼女は、私達の活動を可視化させ、絵を描き、小さなギャラリーで展覧会を開いています。あなたのように優れた実力や表現力はありませんが、伝える能力は備えています」

猫沢さんは、晴れやかな口調です。

「そこに私の描いた、この絵を飾る意味はあるのかね?」

「ありますよ。私達は、彼女を媒体にしてテラビト達にカンタスカラーナの存在を知らせているのですから…」

「しかし…他人の絵を飾るなんて馬鹿げた事を承知してくれるのか?そもそも、絵が違い過ぎるだろ?」

違い過ぎるなんてものではありません。実力の差があり過ぎです。賞を取るようなベテラン画家の作品が、無名の作家の個人展覧会で、一緒に展示されていては、大問題に発展しかねません。

「簡単さ、門田さんが、この絵のイメージをサンプル1号の女性に送ればいい、彼女がそれをうまくキャッチして、本人が自分の手で、出力すれば問題はないよ」

寅次郎博士は、涼しげな表情で言います。イメージを送る。そんな事は可能なのか?と言う顔の門田さんに一言伝えました。

「門田さん、思い出すんだ。出来るよ」

「分かった。やってみる…」

「あの…この絵、私達に、譲っていただけませんか?」

チャット博士が、目を輝かせています。

「構わないよ。君は、この猫の知り合いかな?」

「はい、叔母にあたります!私は、とても嬉しいのです。テラで、このような形で再びジャッコ博士と再会出来た事が…彼女は、とても優秀で勇敢な猫でした」

チャット博士は、瞳をうるませています。

「そうか、身内の猫さんか、ならば、喜んで譲ろう」

「お礼として、これを差し上げます」

チャット博士は、ポケットから、小さな巾着袋を取り出しました。

「なんだね?これは?」

「ニャンタンです。一粒で体が温まり、二粒で疲労回復し、三粒で活力がみなぎります」

「ほう!ありがたい!最近、朝方、寒くて畑仕事が辛くてよぅ、疲れが取れなかったんだ」

門田さんは、大喜びです。チャット博士は、更にポーチから予備のニャンタンBOXを渡しました。

「どうぞ、一粒」

チャット博士は、門田さんと、寅次郎博士に渡すと…

「おや?これは、何かに似てる…?」

と、二人は顔を見合わせていました。

ニャンタンとは、猫の星では疲労回復の実として重宝されている。素敵な食料です。 

深き森の入り口付近に生息する、ニャンタンの木は、猫達の健康を静かに見守る、不思議な植物なのです。

「なるほど…だから、私は、日本のアレが好きなのか…?謎が解けた!」

寅次郎博士は、神妙な面持ちで、おもむろに自分のポケットから、日本人の大半にはお馴染みの、とある物を取り出しました。

「風天さん…そりゃぁ、仁丹じゃないか?確かにちょっと味も形も似ているが…」

銀色に輝く小さな粒状の物体。寅次郎博士が、物心付いた頃から、手元にあるものでした。

「…その通り、これは、何故か好きで手放せないんだ…」

「寅次郎博士、あなたはカンタスカラーナ時代、いつもニャンタンを持ち歩いていましたよ」

猫庭博士が、ニコニコしながら言いました。

「そうだったのか…ニャンタン…効能は似ても似つかないが、味と形は、とてもよく似ているな…体がポカポカしてきたよ」

寅次郎博士は、チャット博士から受け取ったニャンタンを、染々と眺めました。

「素晴らしい絵をありがとうございます。ところで、門田さん、私に考えがあるのですが…」

猫沢さんは、何か思い付いたようです。

「なんでぃ?」

「あなたが受け取ったカンタスカラーナの情報やイメージを、サンプル1号に転送する実験がしたいのですが…?ご協力願えませんか?」

「どうするんだい?」

「先程、言った事と同じです。何度か、イメージを送るだけです。うまくいけば、サンプル1号は、作品として紙の上に可視化させますが、どのように変化するか見てみたいのですよ」

「なんのために?」

「漬け物石(ストーンブロック)の除去具合を知りたいのです。送られたイメージの再生の度合いを見れば、ある程度分かる事があります」

「ほう?面白そうだな?いいだろう。詳しいことが決まったら教えてくれ」

「ありがとうございます」

猫沢さんは、深々とお辞儀をしました。

すると、寅次郎博士が、

「そろそろ話を簡単にまとめようか?私達は、村を守り地道に計画を進め、君達は、イクサフィーゴ達を探す。何か変化があったら教えてくれ」

門田さんと、猫達は力強く頷きました。 

「おや、もうこんな時間か…」

窓を見ると、日が陰り、薄暗くなっていました。

寅次郎博士は、食事を催促する屋敷猫達の視線に気づき、慌てます。それを察した猫沢さんは、

「では、私達はこれで、失礼します」

乗組員の猫達を引き連れ、宇宙船に戻りました。

特殊捜査隊員達は、一旦、宇宙船に戻り、屋敷の外を警備開始です。

それぞれの、新たな任務に、進み始めた彼等、この先、どのような展開になっていくのか?

カルカナル磁場を、壊す事は出来るのか? 

サンプル1号である、この物語の作者に、門田さんは、イメージを送ると言う実験、果たして、成功するのか?

新たな展開を前に、作者は、心を改めるのでした。

(第5章…おわり)

(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。

物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。

そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、今年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表。2016年6月に開催いたしました(^O^)

2017年の6月も、幻想の魚の秘密.第4弾を展示します!既に準備は始まっています。お楽しみです。

猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)

※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)

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個展連動SF猫物語[幻想の魚の秘密]シリーズ

東京 高円寺 猫雑貨&ぎゃらりー猫の額さんで、展開している。オリジナルSF猫物語を更新しています。

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