星を繋ぐ猫達 《第7章 アクア操縦士と橋渡しのサリー》
高円寺 猫の額さんでの、個展開催まで、1ヶ月を切りました。急ピッチで制作中です。
では、続きをお楽しみ下さい。
画像は、アクア操縦士です。
[第7章②アクア操縦士と橋渡しのサリー]
アクア操縦士は、ニャンタープライズ号の優秀なパイロット。彼女は、元々カンタスカラーナ染色体XZYX(男性型)ですが、外見はXZZX(女性型)です。そう、姿形を変えているのです。
「彼女も、アクア操縦士同様、テラ染色体XYです。そして、別次元のアクアです」
「なるほど!!」
ドクター猫宮は、合点がいったのか、肉球をポン!と叩きました。
「柏原さゆり…本名、柏原勇人(はやと)、コードネームは、サリー、彼女は、5年ほど前に[橋渡しの民]に覚醒し、3年前に、本来の姿になるべくして外科的適合手術を受けています。本来ならば、彼女はXXの染色体の体を持って、生まれる予定でしたが、手違いでXYで生まれてしまい、長い苦悩を抱えていたそうです」
猫沢さんは、淡々と報告しています。猫達は、なるほど!と、次々と、肉球をポンと叩いていました。
「彼女のお陰で、寅次郎博士達の、遅れていた計画が、進められていますよ」
猫沢さんは、ニッコリと答えると…
「しかし[橋渡しの民]と言う種族は、一体、どこの宇宙地区からやって来た生命体なのかね…?」
クルーの中で最年長、猫沢さんが学生時代、同級生だった、猫田教授が、問い掛けます。
「解りません。現在、猫居博士に調査をお願いしています。もしかしたら[東の猫の民]と深い繋がりがあるかもしれないと、言ってましたよ」
「なんと…!」
「そして、私達、カンタスカラーナ星人は、テラビト達とも密接に繋がっていると…」
猫沢さんは、小さなタブレットを眺めながら、猫居博士からのデータを読んでいました。
「あの、キャツウバ山にあるワームホールは、ヒノモトの三輪山と繋がっています。カンタスカラーナには、私達が住む以前に住んでいたであろう生命体の遺跡が点在し、テラにも、いくつか、似たものがあります。もしかしたら、何かヒントがあるかもしれませんね…」
猫沢さんは、真剣な面持ちで口を開きました。
「あの星に、僕達以前の遺跡…そんなものがあるんですか??僕はてっきり祖先の遺跡だと…」
男性クルーの中で、最年少の赤猫(あかね)くんが、口を開きました。
「いいえ。私達は移民です」
猫達は、目を丸くしています。
「私達の祖先も、元々、別の星からやって来ました。共通点があっても不思議な事じゃない…あの星は、故郷星を破壊された祖先達を、救ってくれた[マザー・ダーニャ]が、導いてくれた星…」
猫沢さんは、虚空を見上げました。
「ダーニャ…強くて美しい女性、私の憧れです。猫沢博士、テラビト達も、元々は、どこかの星の民だったのですか…??」
女性クルーの中で、最年少のミッシェルが、問い掛けます。
「そうです…ですが、ここでは、それらを全て忘れてしまうような現象が起きています」
「カルカナル磁場…」
猫達が、ブワッと毛を逆立てました…
「カルカナル達も宇宙生命体の一種。彼らはテラビト達の放つエネルギーを餌にして、生命維持をしています…」
猫沢さんの表情は曇りました。彼自身も、カルカナル磁場の恐ろしさを、幼い頃に経験しているので、身震いをしています。
「確か、寅次郎博士は、彼等は昔、カンタスカラーナに漂流してきた猫達のブレーンを乗っ取り、暗黒世界を造ったと言ってましたね…信じられない事です。今はテラで…」
赤猫くんは、星の事実、現在、地球で起きている現象を目の当たりにし驚きを隠せません。
「乗っ取られた、ウィラード一族は悪の限りを尽くした。今なら、彼らを許せますが…あの頃は憎くて憎くて仕方なかった…」
猫庭博士は、目に大粒の涙を浮かべていました。
かつて、猫庭博士の祖父は、ウィラード一族が経営する大企業カルカナルで、働いていました。しかし、虎之助博士(現在の寅次郎博士)の、救済の導きにより、カルカナルを離れ[深き森のコロニー]に身を置き、多くの猫達を救ってきたのです。
「私達は幸い[思い出す]のが早く、彼等の支配下から逃れる事が出来た…」
猫沢さんは、明るい表情で、言いました。
「しかし、テラビト達は…」
猫庭博士の顔を覆ったタオルは、涙を、どんどん吸い込みます。
「カルカナル磁場に、すっぽりと収まり、様々な事を忘れてしまった…忘れたどころか虜だ…テラとは、こう言う世界だ。と、当たり前のように…」
猫沢さんは、悲しげな表情を見せます。
「そう
信じていた、私達の先祖達は、その世界の中で、気づかぬうちに、ボロボロになっていった…。様々な物質を摂取させられ、頃合いを見計らい息絶えさせた亡骸を、高温の焼却炉に放り込み…破棄した…遺伝子もろとも抹消した…」
猫庭博士は、涙を溢れさせながら、祖父から聞いた、悲しい昔話を、ポツリポツリと話しました。
猫達は、恐怖に怯え、ゴクリと息を飲みます。
「この惨劇を…2度と繰り返す事はしたくない…」
「繰り返さない為に、私達は、ここに来た…」
猫達は、お互いの肉球をギュッと握り合いました。
「明日、1号よりも、少し早く、高円寺に向かいましょう。新たなテラビト達と出会うのです!」
猫沢さんは、ニッコリして、猫達を勇気づけました。
そのころ、寅次郎博士達は…?
「寅次郎博士ー!この荷物どこに運びましょうか?」
「じゃあ、右の奥の部屋にお願いしようか」
「了解!」
重そうな段ボール箱を2つ重ね、軽々と運ぶ、長身の女性と一緒にいました。
「寅ちゃん良かったな。サリーはレスリング選手時代から、部員の身の回りを管理してた。あいつに頼めば、今まで出来なかった事が出来る」
神楽師匠の孫で、神楽屋の店主、そして、さゆり(サリー)の大学時代の部活の先輩である、神楽火水斗(ひみと)が、暖かい眼差しで、彼女を見つめていました。
「本当に、助かるよ」
寅次郎博士は、ニコニコです。
「あいつには、寅ちゃんの家の近くの古民家で生活をしてもらうよ。何か困った事や、力仕事があったら遠慮なく言ってやってくれ。それに、元チャンピオンだ、ボディーガードにもなるぜ」
「ありがとう。火水斗くん」
荷物を運び終えた、さゆりが、戻ってきました。寅次郎博士は、すかさず、
「ありがとう、助かったよ。サリーちゃん!」
さゆりは、はにかみながら笑顔で返しました。美しい彼女のジャージの袖口から見える、たくましい二の腕には、タトゥーらしきものがチラリと見えましたが、寅次郎博士は、気にもとめず、始終、笑顔である事に、火水斗は、安心していました。
「サリーの引っ越し作業も、寅ちゃんちの模様替えも一気に済んだし、店で旨いもん食おう。二人共、俺の車に乗りな」
180センチ近くある、体格の良い二人の間に立つ寅次郎博士は、まるで子供のよう。
ちょこまかと、二人の後を、着いていきます。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第3弾を、昨年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
2017年の6月も、幻想の魚の秘密.第4弾を展示決定!既に準備は始まっています。お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
(※ このblog内の画像や文章を無断で転載等をする事は、ご遠慮下さい)
0コメント