星を繋ぐ猫達 第三章 《神楽屋-カグラヤ-》
年末の慌ただしさに、追わるように展開していきます。
画像は、寅次郎博士と神楽火水斗
(即興スケッチにて ラフな挿し絵となっております。ポストカードの販売は、ありません)
星を繋ぐ猫達 第三章《神楽屋-カグラヤ-》
「伝説の寅さんが、還ってきた…」
寅次郎博士の事を知る客達は、大騒ぎです。
十年前の未知太郎師匠亡き後、いっときは、店先に出て実演作業部屋で蕎麦を打っていた寅次郎博士…先代の味を完璧に受け継いだ人物と、話題になりました。
ところが、当時、とても喧嘩っぱやい短期な三代目店主、神楽火水斗(カグラヒミト)と大喧嘩をし、パタリと店に来なくなってしまったのです…
仲直りした後も、寅次郎博士は、自宅の作業場に引きこもり、蕎麦を打ち続け店に出していました。
お互い、考え方や価値観が全く違う為、同じ空間で作業をこなすのは困難と気づいた二人は、ずっと、このスタイルで店の味を守ってきたのです…
当初、火水斗店主は、寅次郎博士の、とんでもない常識外れとも思える考え方に、ひどい違和感と不信感を抱きつつ、接していました。
しかし…ある事がキッカケで、寅次郎博士の考え方は、間違いなどなく摂理や筋が通ってい事に気づき、火水斗店主は、寅次郎博士から様々な事を学び、信頼関係を築いていきました。
少しずつ開いてしまっていた溝を、長い時間かけて埋めていったのです。
そして、猫沢さん達と接触した寅次郎博士は、自らの記憶や指命や任務を思い出したと同時に、長年蓄積していた、心の中のワダカマリやシコリが一気に溶けてしまったのでした。
翌朝、さらに身も心も軽く、まるで羽でも生えたかのような気持ちになり
「ま、いっか!」と呟き、早朝に打った蕎麦を、自分の車で運び込み、店に現れたのです。
数年ぶりに、実演作業部屋の神棚にお参りをしようと、部屋に入ると、ほこりひとつないピカピカな状態である事に驚き、毎日の掃除とお参りをかかしていなかった、火水斗店主の心を知るのでした。
あの作業部屋は、孫の彼にとって、とても神聖な場所であり、大切な場所でもあります。
そして、いつでも、寅次郎博士が、戻って来ても良いようにと…きちんと畳まれ手入れされた、未知太郎師匠の作業着と共に、待っていたのです…。
ここは、神楽未知太郎の一番弟子、風天寅次郎(カザマトラジロウ)の、もう一つの居場所でもあるのです。
火水斗店主は、二番弟子ですが、自分には、まだ、この作業部屋に入る資格は無いと、あの時以来、木戸を外す事は無かったのです…。
突然の寅次郎博士の再来に、常連客達は、大喜びしてガラス越しにエールを送ります。時折チラリと見ては笑みを返す寅次郎博士は、楽しそうです。
休憩時間…寅次郎博士は、火水斗店主と店の勝手口で休んでいました。
「ここで、寅ちゃんと休憩するのは何年ぶりだろうかなぁ…?」
「十年ぶりくらい…かなぁ…?」
「あの頃は、よく喧嘩したっけなぁ…」
「あれだけ喧嘩しても、絶対、手を挙げなかったプロ意識は、素晴らしいと思ったよ…」
「俺が、あんたに手ぇ挙げたら、ただの怪我ではすまない…それだけは、やらないと誓ったんだ…一般人には、決して拳は奮わないとね…」
「元レスラーとは言え、桁外れの破壊力だからなぁ…店を破壊した時は、凄かった」
二人は、笑いながら、店の裏に流れる小川のせせらぎに耳を傾けながら、台風一過で真っ青に抜けた空を眺めていました。
「あれから十年か…寅ちゃんと、初めて出会ったのは二十年前…懐かしいな…じぃさんが八十二になった頃、俺は、二十三…親父は店は継いだが、じぃさんの技術は、全く修得出来なかった…名前だけの二代目店主だ。畑で野菜を育てる事が性に合ってた…俺もあの頃は、店を継ぐ意思なんて更々なくて、リングに立っていた頃だ…店は後継ぎもいないからと畳もうしてたんだよな…そんな時に、寅ちゃんが現れた…じぃさんは元気を取り戻し店を続けた…間一髪だったよ…ありがとう…」
「あの蕎麦には、不思議な力があった。私は、師匠に呼ばれていたんだな…もっと早く、気づいていれば良かった…」
寅次郎博士は、そう言うと、そよぐ風に視線を投げ、風の行く先を眺めていました。
「当時の俺には、じぃさんの蕎麦が、何故、あんなにも人々を惹き付けるのか、解らなかった…」
「宇宙を感じるんだよ…。皆、何かを求め、何かを思い出そうとして、あるいは、呼ばれて、ここに来るんだ…かつての私のように…」
「何かを思い出す…か…。あ!そりゃそうと、じぃさんの遺品整理してたらさ、面白いもん見つけたんだよ!」
「何?」
「謎の言葉ノートだ。生前のじぃさんは、時々、変な外国語だか、宇宙語なんだかの言語を喋ってただろ?」
「ああ」
「意味のわかんねぇ言葉や文字がビッシリ書いてあるんだよ。寅ちゃん見るか?」
「見せてくれ。今の私なら解読出来る」
「マジかよ!!」
「あぁ、驚いた事に、いつの間にか、読めるようになっていたんだよ!」
「すげー!じゃ、帰りに家に寄ってくれ!さて、仕事に戻るか!」
二人は、再び厨房に戻ると、蕎麦を打ち始めました。
未知太郎師匠のノートには、一体、何が書いてあるのか…?
その頃、猫沢さんは…?
カンタータスカラーナの、カルカナル時代再来の危機を知った猫沢さんは、猫伊豹之助博士からの詳しい報告データに目を通していました。
「なんてこった…ウィラード二世は、死んではいなかったのか…?いや、確かに死んだはずだ…?私は見たんだ。彼が目の前で木っ端みじんになった姿を…」
一体、カンタスカラーナでは、何が起こっているのか…?
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、今年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表。2015年6月5日~17日に開催いたしました(^O^)
来年の6月も、幻想の魚の秘密.第三弾を展示決定しました!既に準備は始まっています。お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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