星を繋ぐ猫達 《第7章④ 猫庭博士の苦悩》
いよいよ、もうすぐです。早いもので、猫の額さんでの個展は4年目です。これからも続きますよー!
6月23日(金)~7月5日(火)の2週間、展示いたします。猫沢さん達も、地球へ遊びに来ましたよ。
私の在廊日程は、6月24日、25日の土日、12時半頃から20時まで居ます。よろしかったら遊びに来てくださいね[(^ー^)]
お待ちしております。
では、物語の続きをお楽しみください。
画像は、猫庭博士です。可愛らしい顔をしていますが、男性ですので間違えないようにしてあげてください。(ポストカードのお求めは、猫の額さんへ! )
[第7章④ 猫庭博士の苦悩]
寅次郎博士の住む猫屋敷に到着した猫達は、玄関のチャイムを鳴らします。
「おやおや君達、こんな遅くに、どうしたんだい?」
すっかり、寝間着姿の寅次郎博士が、出迎えました。
「寅次郎博士、大変です!カルカナル磁場が強くなっています!」
「…なんと、まぁ落ち着いて、中に、お入りなさい」
寅次郎博士は、猫達を招き入れると、お茶を出します。猫達は、一気に飲み干すと落ち着いたのか、冷静さを取り戻りました。
「磁場が強くなったとは?」
「はい、私達は現在、エドエリアを調査していたのですが…磁場が、昨年よりも増しているのです…三基のイクサフィーゴ達が、稼働しているというのに…なぜ?」
猫沢さん達は、少しオロオロしています。
「君達は、再び、カルカナルに同調してしまっているね。特に猫庭くん…」
寅次郎博士は、猫庭博士を、優しく見つめました。確かに、彼は、ことあるごとに、カルカナル時代の悪夢を思い出しては泣いています。それが一体?
「私は、テラに来て以来「あの時代」と重なり、気持ちが動転してしまうのです…」
「猫庭くん、君の星では「あの時代」は終わっているんだよ。もう泣かなくて良いんだよ」
寅次郎博士は、猫庭博士の頭を優しく撫でます。
「ですが、私は、現在のテラビト達を見て、悲しい気持ちになり、涙が止まらないのです…」
猫庭博士は、うつむいて、顔を覆います。
「君は、地球人達の事を、とても心配してくれているんだね…そう言えば、君のおじいさんも、泣いてばかりいたなぁ…」
寅次郎博士は、ふと、猫庭博士の祖父の事を、思い出していました。
「え?」
「彼は、自分が造った技術で多くの猫達の命を犠牲にしてしまった事を、深く悔やんでいた…しかし私は、彼に言ったんだ…「いつまでも、君が後悔や悲しみに押し潰されていては、カルカナルの力は増すばかりだ。涙を拭いて進みなさい」とね…そして、猫庭くん、君は、もう、おじいさんの悲しみを、背負わなくていいんだよ…」
「でも…あ!」
猫庭博士が、ハッとした一瞬、空間が変わり、虹色の世界が現れました。そこに見覚えのある姿が…
「おじいちゃん」
仔猫の姿になった猫庭博士を、十三朗博士が抱きしめると、頭を優しくなで、寅次郎博士達に、深くお辞儀をして笑顔で去っていきました。
「…おじいちゃん…」
猫庭博士の目には、大粒の涙が、ぽろぽろ…渡されたバスタオルに、顔を埋め寅次郎博士に抱き抱えられていました。
「もう、大丈夫だろう。猫庭くんは、長い間、一人でおじいさんの十字架を背負っていたんだね…」
猫庭博士は、とても安心しきった表情で、こくりとうなずきました。
「 不安や恐怖は、カルカナル達のエネルギー。磁場が強くなったのは、人間達が産み出した想念…集合意識に刷り込まれた恐怖や不安が、この世界を描いているからだ」
「テラビト達が自ら…?」
猫沢さんは、キョトンとしています。
「自らのように、と、見せ掛けているだけさ…。カルカナル達は、磁場の渦の中に、複数の火種を作って投げ込み、人々は、それに群がり、揉め事や争い、疑心暗鬼を造って、食糧となるエネルギーを造り出しているんだよ。その場所は、君達が今、訪れている都市には、特に集中しているんだ…彼等にとって最高のエネルギーが造り出される養殖場みたいなものさ。昨年よりも磁場が強くなったのは、あの時の事故の余波だよ。波紋のように拡がり、ユックリと、人々を壊していく…」
寅次郎博士は、寂しげな表情で語ると、猫庭博士を抱きしめました。
あの時の事故とは…?
「そして、それを更に促進させる物質を、テラビト達は、気がつかずに、体や心の中に取り込んでるんです…」
寅次郎博士の膝の上に、ちょこんと座った猫庭博士は、涙をぬぐいながら、言いました。
「漬物石の材料ですね…蓄積されたテラビト達は、ブロックがかかり、思考が停止してしまう…」
猫沢さんは、静かに答えました。
「狭い視野と、浅い思考で固定させ、深い知恵や理や摂理を排除し、正常に行動出来ないようにしているんだよ…その方が管理するのが楽なのさ…」
猫達は、息を飲みました。寅次郎博士は、話を続けます。
「万が一「コノセカイハナニカガオカシイ?」と、気づいた者がいれば、心地好い美しい言葉やビジョン、はたまた逆に、恐ろしいビジョンを見せ、忘れさせ、磁場の中へと引き戻そうとする…。そうなると、人々は、カルカナルの本体を見抜く事が出来ない…その為に、使われた物質達の数は、何千…いや、何万種類にも及んでいる…」
寅次郎博士の手のひらに現れた、幾何学模様の球体の中に、歪んだ模様が浮き上がり不協和音を発すると、猫達は、思わず耳を塞ぎました。
「君達の星は、カルカナルの支配から開放されて、まだ浅い、地球でのカルカナル磁場に影響されるのは仕方ない、しかし、同調しては、再び巻き込まれてしまう…臨時基地での任務が終わったら、この村で休息を取りなさい」
「良いんですか?」
「構わないよ。君達は休みなく、この星での任務をこなしてる。たまには休んでもいい」
寅次郎博士は、にっこりして、すっかり落ち着いた猫庭博士を膝から降ろすと、猫庭博士は、かわいくお礼をし、猫達の輪に戻りました。
「ありがとうございます」
猫達は、一斉にお辞儀をしました。
「イクサフィーゴは、あと1基と、石盤だけだな…」
寅次郎博士は、そうつぶやくと、猫達が集めたキーパーツを眺めました。イクサフィーゴに、1つづつ装着された鍵のような不思議な形の金属製のパーツ、石盤と組み合わせる事で、何かが起きるのでしょう。
「寅次郎博士、イクサフィーゴ達が、4基揃えば風穴は、開けられるんですよね…?」
猫沢さんが、カルカナル磁場を可視化した映像を、壁面に映しました。大きく厚い層が、複雑に覆い被さっています。
「開ける事は出来るが、それだけで、世界が一気に変わる事はない…そこから、更に深い作業が必要となる、気が遠くなるようなね…」
「あなたは、カンタスカラーナで任務を終える直前まで、私達に様々な技法を伝えて旅立ちましたね…」
猫庭博士は、ボロボロになった祖父の手記を見せました。
「そうだよ。私達は、次なる道への、きっかけを投げ掛け、伝え歩く民なんだよ。君達は、私の伝えをしっかり受け継ぎ、実行し、カルカナルの闇を見事に乗り越え、私の元に来た…こんなに嬉しい事はないよ」
寅次郎博士は、笑顔で猫達を見つめました。
「君達は、地球人達が見せる現象を見て、さぞ驚いた事だろう。どのような結果になろうとも、しっかり見届けなさい。君達と仲良くなった地球人達に、乗り越える為の技法を伝えなさい」
寅次郎博士は、優しい口調で、不安や恐怖に震える猫達を包みました。
「はい、伝えます。では、私達は、臨時基地に戻ります」
「わざわざ報告ありがとう。安心して任務を続けなさい」
猫沢さん達は、安心に包まれ軽くなった気持ちと共に、宇宙船に乗り込みました。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第3弾を、昨年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
2017年の6月も、幻想の魚の秘密.第4弾を展示決定!既に準備は始まっています。お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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