星を繋ぐ猫達 《第8章⑦ 神城村の謎》
お待たせしました。ようやく更新できました。
熊本県の金魚と招き猫イベントも無事におわり、ホッとしています。御来場下さいました方々ありがとうございました。
出展した招き猫は、近々どこかで、お披露目出来たらと思います。
では、物語の続きをお楽しみ下さい。
画像は、2016年、個展作品「虚空高舞上‐そらたかくまいあがれ‐」使用画材、三菱ユニポスカ
《第8章⑦ 神城村の謎 》
続々と村人達が、店の中に入ってきます。
続いて、氏子(うじこ)達が、奉納された、お酒やお供えを運び込み、座敷にズラリと並べていました。この村では、お疲れさん会で、お供えを分け合うのです。
上座には、村長、副村長、権力者や有力者達、外からの移住者の寅次郎博士達は、後ろの隅の席、クッキリと力関係があらわに…
村人達が、勢揃いすると、乾杯のおんどが取られ、宴が始まりました。
皆が酒を酌み交わすさなか、寅次郎博士は、自分の器に盛られた料理を、隣のサリーの、お膳の器にヒョイヒョイと乗っけています。
お酌から帰ってきたサリーは、ビックリ
「せんせい…これは…?」
「お腹すいたろう?たーんと、お食べ!」
満面の笑みで返す、寅次郎博士
「寅ちゃんには、この量は多すぎるんだよな。ちょこっとでいいんだ。お嬢ちゃん、遠慮せずに食べな!」
寅次郎博士の隣に座っていた男性(移住組)が、サリーに話し掛けます。寅次郎博士の家の近所の人です。
「あ、ありがとうございます。いただきます!」
程なく 皆の酔いが回り始める頃…寅次郎博士の近くに座る村人が、ヒソヒソと話しています。
「あの、開かずの蔵だけどよ…何かの気配がするってよ…鬼かな?」
「今更、鬼伝説かよ、いないよ…もう滅びちまったんだろ?」
「でもよ。蔵が開いたのは、祭りの前日だったろ?今日、何か起きないかヒヤヒヤしてたんだよな…」
「起きなかったじゃないか?気にしすぎだよ」
「しかし、気味わりぃよな…あの神輿、見たか?UFOみたいなの?」
「見たよ。変だったけど、かっこよかったよな…」
「かっこいい…!?」
「昔、俺がTVで見た宇宙船みたいだったよ。あの「鬼」って言われている化け物って、本当は宇宙人なんじゃね?」
くったくのない笑顔で話す彼等に、猫沢さんは、耳をピーンと立てて、彼等の話を聞いています。
年は20代位の男性二人、どうやら、祭りの為に帰省してきた若者達のようです。あっけらかんと話すのは、顔が小さく背が高い手足がスラッとしていてモデルのような男性。怯えるのは、柴犬のような、素朴さと愛嬌のある青年。
その隣には、年配の女性達の会話が聞こえます。
「鬼が来るよ…わたしゃ怖いよ…封印が破れてしまったんじゃ…喰われてしまう…」
「私、今朝、蔵の近くを通ったら、変な視線を感じて気持ち悪かったよ…早くなんとかしてもらわないと…松方さんに助けて貰おうよ…」
「松方さんに、偉い拝み屋さんを呼んで貰おうよ…でなきゃ怖くて夜も寝られせんわぁ…」
小声で話す会話も、猫沢さん達は、聞きのがしません。松方さんと言うのは、先程、二番のりで入ってきた男性で、寅次郎博士を無視して行った人物です。
猫沢さんは、松方さんの所へトコトコ近づいていきます。
「村長さんよ。あの蔵だけどよ。壊してしまおう。でよ、封印を更に強くしたい。あいつらは凶悪な鬼だ、災いが起きる前に、完全に封じ込めてしまおう!」
「しかし、そんな事をしては、余計と災いが…仮にも、彼等は、昔、ここを守っていた神様だって言うじゃないか?鬼にしてしまったのは、むしろ、私達のせいじゃないのかね?」
村長の鋭い意見が、周りの空気を変えます。
「いや!わしの先祖は、この地で開村した時に戦ったんだ。姿は鬼そのものだった神なんかじゃない!恐ろしい邪神だ!」
「松方さん、悪い事は言わない、あの蔵は、そっとしておこう。新しい祠を作って祀り直してやろうよ」
「いや!奴等はきっと再び村を襲う!腕利きの拝み屋を呼ぶ!一網打尽にしてやる!」
怒りに震え真っ赤な顔の松方さんを、周りがなだめます。
二人の意見は真っ二つ、村人達の間では、封印派と、見守る派に別れてしまいました。
ざわめく中、猫沢さんは、寅次郎博士の元にかけ戻ってきました。
(寅次郎博士、大変な事になりましたね)
(急がねばな…新たな呪術をかけられたら、彼等は、再び、この村から出られなくなる…)
(猫沢博士、寅次郎博士、現在、村人達の意識の周波数が[怖れ]に傾いています…危険な状態ですね)
猫宮医師は、不思議な形の計測器を、真剣に見つめます。
(寅次郎博士、センジュマナタカ氏は、どこにいますか?)
(あ、そうだった彼に話し掛けてくる!)
寅次郎博士は、奇妙に渦巻く空気に圧倒され、彼に声をかける事を忘れかけていました。
祭の後の、疲れも手伝ってかボンヤリしていたのです。
慌てて、ビール瓶を片手に、千寿氏の所へ向かいます。
「やぁ千寿さん、お疲れさんです」
「あ、寅さん!お、お疲れ様です。あ、すみません、ありがとうございます…」
空のコップに、お酌され、慌てる千寿氏
「松方さんは、あの蔵を壊すと言ってますね…」
「そ、そんな事をしてはダメだ…あそこには貴重な村の歴史が保管してある。民族文化財なんだ…しっかり発掘調査をして保存するべきだ」
心なしか、コップを持った手が、小刻みに震えていました。
「あなた、確か、学者さんですよね?何か、良い方法はありませんか?よくあるじゃないですか?何か建設しようとしたら、遺跡が出てきて、建設中止になったとか…」
「あっ!そうか!その手がありましたか」
投げ掛けたヒントに、千寿氏の表情が、パッと明るくなりました。
「早速、仲間に連絡してみます!」
「ある程度、おおやけになれば、村人の反応も変わりますよ。私も、あの蔵にたいへん興味があります。ご同行させてもらえませんか?」
「もちろんです!」
さっきまで、死んだ魚のような目だった千寿氏は、再び、子供のように目を輝かせはじめました。
「では、明日、千寿さんのお宅に伺っても良いでしょうか?」
「え?は、はい、散らかってますが…」
「構いませんよ。ではまた明日」
寅次郎博士は、にこやかに席に戻っていきました。
一瞬、凍てついた空気は、また、元に戻り、賑やかさが戻ります。
その後、寅次郎博士は、宴の輪から、こっそり抜け出し、テーブルで一人、野菜スティックを片手に、烏龍茶を飲んでいました。
猫沢さん達も、一緒に野菜スティックをポリポリしています。
(寅次郎博士、コンタクトありがとうございます)
(あぁ、まっつぁんが行動を起こす前に、彼の調査隊が到着してしまえばいいんだがね…一刻も早く、彼等を星に還してやりたい…)
(蔵から見つかった、あの奇妙な神輿は、彼等のSOSサインです…[拝み屋]と言うテラビト達が[呪術]と言う周波数を使い、彼等のサインを封じ込めています…)
猫沢さんは、カミシロ族長から受け取ったメッセージと、蔵周辺の周波数の分析結果を照らし合わせています。
(そうだったのか…その拝み屋達は、相当の力を持っていたんだな…)
寅次郎博士は、小さな小窓から、蔵のある方向を、眺めていました。
しばらくして、お開きになったのか、村人達が、お供え物の御下がりを手に、帰宅し始めます。そこに、千寿氏の姿はありません。先程、こっそりと帰っていたのです。
それを、横目で見届けた寅次郎博士も、ゆっくりと自宅に向かいます。
この先、彼等の運命は、何処へ向かうのでしょうか?
(つづく)
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第四弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
2018年の6月も、幻想の魚の秘密.第5弾を展示決定!お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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