星を繋ぐ猫達 《第8章⑧ 神城村の祭》
もうすぐ師走、今年も終わろうとしています。
今年は、バタバタしていて、更新が亀の歩み!
書いてる私も予想しなかった展開、この先どうなるのでしょう?まずは、お楽しみください。
画像は、2016年個展作品です。漆黒の天使猫の猫沢さんです。
《第8章⑧ 神城村の祭 》
寅次郎博士は、自宅に戻ると、お供えの御下がりを神棚に供え、サリーと門田さんの到着を待ちました。
緊急ミーティングです。
同時に到着した二人が、部屋のドアを開けると、
「いらっしゃい。急に呼び出してすまなかったね」
「いんや、かまわねぇよ」
広間では、寅次郎博士をはじめ、猫沢さんと猫宮医師、猫谷エンジニアが、待っていました。
「おや、猫の宇宙人さん達も、一緒かえぇ?」
門田さんは、目尻を下げ微笑むと、
「門田さん、お久しぶりです!」
猫沢さん達は、笑顔で返しました。
寅次郎博士は、お茶を出し、例の神楽師匠のノートを広げ
「さっき、大まかに説明しておいた通り、タイムラグを埋める作業をする事になった」
「みちたろさが、やり残した任務だってな?」
「あぁ、マゼラン星カミシロ族の救助だ。現在、彼等は星に還れぬ状態にあり、その為に生じた時空の歪みを矯正する」
「マゼラン星から?なぜ、この星に?」
「地球にしかない鉱物を採掘しに数百年前に、この地に来たようだ」
「鉱物?彼等は、今、どこにいるんだね?」
「神社の裏の蔵の中だよ」
「神社?」
「門田さん、あんた、この村の伝説知ってるか?」
「?ん~?伝説?」
「鬼伝説だよ」
「鬼伝説か!?知ってるよ。言い伝えでは、昔、人喰い鬼が、村を襲い、多くの村人達が犠牲になった為に、彼等と戦い、強力な力で封じ込めた。って言うのだろ?昔、絵本を出した覚えがある」
門田さんは、小さなメモ帳を取り出し、更々と、落書きをしていました。手足が異常に長く目を光らせた、恐ろしい形相の何かを…
「それは、表向きさ、実際は、彼等は、人目に触れぬように、ひっそりと暮らしていただけだ。単に異形ゆえに「人食い鬼」と恐れた、村人達は、勝手に戦略を練り、封印してしまった。この村の地中には…カミシロ族の亡骸が眠っているよ…かろうじて、生き残った者が少数いるだけだ…」
寅次郎博士は、人懐こい、愛嬌のある笑顔を見せる、カミシロ族の写真を見せました。
「全然違う…真逆じゃねぇか…」
驚く、門田さんと、サリーは、思わず地面に視線を向けました。
「どうやったら、彼等は助かるんだ?」
「地球人が、かけた呪詛を解き、通信器機を復旧させる。マゼラン星から宇宙船を遠隔修理し、生き残った者達を採掘した鉱物と一緒に送り出す」
「寅次郎博士、マゼラン星とコンタクトが取れました。修復と受け入れ体制が整ったようです」
猫谷エンジニアが、淡々と報告します。
「ありがとう。昨日、封印が弱まったが、村の権力者が、彼等の復活を恐れ、新たに封印を強化しようとしているよ…」
寅次郎博士は、暗い表情を見せました。
サリーは、お祭りのお供えの饅頭を見つめながら言いました。この村の歴史を垣間見た彼女は、この祭りに込められた、本当の意図に気づいたのでした…
「寅次郎せんせい…言いにくいんですが…今日のお祭り、封印手伝ってますよ…」
「え?」
「私、このお祭りに参加して強い違和感を感じたんです。村を時計回りに練り歩きましたよね。あの時、地面に漂っていたエネルギー体が見えたんですけど、練り歩いた後、消えていました…あれは、マゼラン星人達だったんですね。今、理解出来ました…」
「なんと…では、私達は毎年、彼等を封じていたのか?」
寅次郎博士は、愕然としてしまいました。
「そう言う事です…」
「では、何故?封印が緩んだんだ?」
「おそらくイクサフィーゴが、稼動しているからだと思います。彼等は反時計回りで回転してます。この動きは封印を緩める役割をしてるんです。ネジを思い出して下さい」
「ネジか…確かにそうだ。サリーちゃん、詳しいじゃないか?」
寅次郎博士は、サリーの[橋渡しの民]としての姿に、感心していました。
「実は、私、昔(覚醒前)から妙な力があって、コントロールできるように、山で修行していた時期があるんです…その時、宇宙の理を知りました。この地球は、いえ、太陽系宇宙は、反時計回りの法則の中にいます」
「しかし、この[世界]は時計回りに動いている。イクサフィーゴの回転方向に気づくとは、さすがだね。そうか…あの祭り…彼等に悪いことをしてしまったな…」
寅次郎博士は、饅頭を、もうひとつ、サリーの手に乗せました。
「あ、ありがとうございます」
「山で修行って、あんた何やってたんだ?」
門田さんは、驚きます。
「修験道です」
「行者だったのか!?」
「はい~護摩焚けますよ。覚醒した今では、もう修行は必要ありませんが、昔は、もう大変でした」
サリーの美しい横顔からは、想像出来ないギャップに驚く、門田さんと寅次郎博士。
彼女は、男性時代、格闘家としてリングに立ち、山に籠った過去があり、現在は性を超え、強く美しい本来の姿に戻った彼女は、あらゆる苦難を乗り越えたのです。
次に、寅次郎博士は、鞄から、例の金属盤を取り出しました。
隣で猫沢さんも、例の金属パーツを出し、テーブルに並べます。
「これは?」
「これが、マゼラン星人を助ける鍵だよ。この中には、宇宙船を遠隔修理する為の中継装置が内蔵されている」
「ひとつ足りない気がしますが…?」
サリーが、欠けてるパーツ部分を、指差しました。
「千寿さんが、持っているよ」
「千寿さんて、私の隣の家の人ですか!?」
サリーは、驚きます。
「そうだ、彼は、カミシロ族の末裔で、地球人とのハイブリッド種。彼等は、彼に、最後の望みを託している…」
その頃、千寿氏は、興奮気味に、電話口で会話をしていました。
「とうとう、見つかったんだよ!今すぐ調査隊をよこして欲しい!とにかく来てくれ!そうだよ。鬼伝説のだよ!」
(つづく)
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第四弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
2018年の6月も、幻想の魚の秘密.第5弾を展示決定!お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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