星を繋ぐ猫達 《第8章⑳ カミシロ族の悲劇》
全国的に、記録な雨量、各地で起きました災害。
被災地の方々の1日も早い復興を願います。
画像は、2016年個展作品「宇宙怪猫ウィラード博士の陰謀」
子猫探偵団、猫沢少年達は、恐ろしいカルカナルに立ち向かいます。何枚かシリーズとして製作しています。このシリーズを描きためて個展してみたいと、考えています。
ポストカードやグッズなど、猫の額さんで購入できます。
では、続きをお楽しみください。
《第8章⑳ カミシロ族の悲劇》
翌日
千寿氏率いる調査隊一行は、蔵の中の物を、すっかり運び終えました。
千寿氏は、最後に半分埋まっていた小さな祠を、掘り出し、きちんと設置し、猫沢さんから、ここの穴から、カミシロ族長達が現れた事を聞き、そのままにしておいたのです。
「もうすぐです。待っててください…」
そう告げると、族長が好きだったと言われている。ある老舗の包装紙にくるまれた、沢山の栗羊羮と、お酒を、祠の横の穴に供えました。
「みんなで食べてください…」
千寿氏と調査隊一行は、祠に手を合わせると、蔵を後にしたのです。
村長宅の自宅倉庫に並べられた、カミシロ族の膨大な書物や道具。
調査隊は、驚きを隠せません。
「さて、彼等について詳しく説明しよう。正式な部族名は、カミシロ族、マゼラン星雲系列の惑星から来た生命体。300年以上前に、この地球にやってきました。彼等の目的は、地球にしかない鉱物の採掘です」
「その鉱物とは?」
「これです」
千寿氏は、霧の箱に保管された鉱物を取り出しました。
「金…!?」
「純度の高い金塊が、この土地で沢山採れました。彼等は小さな居住基地を作り、ひっそりと採掘しながら過ごしていたのです。ところが、人間達に見つかってしまい、異形故に「鬼」と勘違いし迫害され、金塊を奪われ、人間達に村を乗っ取られてしまいました。これが神城村の真実です…」
千寿氏は、役場の観光課が作った、鬼伝説のパンフレットを開きます。恐ろしい姿で描かれた鬼達は、カミシロ族です。
「村の石碑や観光案内には、鬼達が村を襲い、一致団結して、封じ込めた事しか書いていなかったよな…」
調査隊は、口々に言います。
「それは、捏造された伝説…」
「宇宙人なら、人間よりも優れた不思議な力くらいあっただろ?」
「あった、だが、力の強い者達によって、呪術にかけられ、力を、封印されてしまったんだ…マゼラン星人達には、彼等の呪術が効いてしまったんだ…」
神社のあちこちに貼られた、札の写真を見せます。
「そんな事ってあるんだな…宇宙人は、私達よりも、もっと優れた力と文明を持っていると思っていた…」
調査隊達は、始めて聞く、地球外生命体の話、意外な事実…
「人間の中にも桁外れの者もいる…この星には、様々な宇宙や異世界から人の姿の肉体を借り、過ごしている者もいる。マゼラン星人達は、地球人に生まれてしまうと星に還れなくなる…あえて、人目につかないようにひっそりと暮らしていた。本来なら、100年位で還る予定だったんだろう…」
千寿氏は、記録帳(滞在日誌)らしきものをパラパラとめくり、読み始めました。
「みんな、これには、大切な事が書いてあるから、聞いて欲しい…改ざんされた部分にあたるエピソードだ。[ある日、瀕死の重症を負った、一人の人間が居住基地の近くに迷い混んできた。私達は、比較的、手足が人間に近い長さの者達を選び、人間を運び込み、手当てをした。助けた人間に「決して、私達の村の話はしないように」と、約束をして別れた…]これが、運命の分かれ道だったんだ…」
調査隊達は、ゴクリと喉が…
「[人間は、時々、私達の基地にやって来ては、お菓子や、野菜を持ってきたり、親好を深めようとしてきた…無下に扱うことは出来なかった私達は、長い手足を短く見せ、人間のふりをして、ごまかしていた…しかし、好奇心旺盛の人間は、何を勘違いをしたのか、無断で、居住基地にやってきては歩き回るようになり、とうとう、採掘現場を見つけられ…巨大な金塊と異形の私達を見て、悲鳴をあげて逃げ帰ってしまった…]」
千寿氏は、始めて目にする彼等の記録に、思わず涙が溢れ出しました。
先程、お供えした栗羊羮と、お酒は、その時の人間が、始めて、持ってきたものと同じだったのです…。好意として届けられた贈り物、族長は、快く受け取り、以来、気に入り、時々、人間の姿に近い者に、お願いし、ふもとの村に買いにいかせていたのです。
「…[に、人間に見つかってしまった私達は…これ以上の滞在は危険と、帰還の支度をしていた時、大勢の人間達が、武器を片手に現れ…]」
千寿氏は、言葉が詰まり、涙で、この先の、文字が読めなくなってしまいました…。
「千寿、大丈夫か!?」
彼は、先祖達の過去と対面し、大きなショックを受けていました。母親から聞いていた話よりも、悲しい過去…
「…[人間達は、逃げ惑う私達を馬や牛で追いかけ回し…矢を放ち、火を放ち、次々と倒され金塊を奪い去っていった。生き残った者達はシェルターに避難し、宇宙船で脱出を試みたが、動かなかった…コントロールルームやエンジンルームが、破壊されていた…そこに、金が使われていたせいだろう。私達は、脱出を諦め、携帯用の通信端末で、救助信号を送った…星と何度かのやり取りの後、何年先は分からないが、必ず助けをよこす[橋渡しの民カミオン]を、待て、その後、通信機のエネルギーは、切れて使えなくなった]…と…」
「橋渡し…!?なぁ、千寿、[橋渡しの民]ってなんなんだ?」
蓬莱氏は、気になっていたのです。また、耳にした…と、言う表情です。
「地球で言うところの、レスキュー隊だろう…[その後、私達は、数人の山伏姿の人間達によって、地中に閉じ込められた。たまに呪術が緩むと、私達は、地上に出て、交信を試みたが、繋がる事はなかった…]」
「気の毒だな…」
「[ようやく[橋渡しの民]らしき人間が、現れコンタクトを試みたが、人間として生まれた為に、記憶が戻っていない事が判明する…しかし、諦めずに交流を続けた。だが、地上に現れる回数が増え、村人に見つかり、再び、強い力で封じ込められてしまった…望みが絶たれた…]」
「かわいそうだな…」
カミシロ族の悲劇を知った、調査隊達は、悲しみの心を共有していました。
おとぎ話の中に隠された。宇宙人の存在…
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第5弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
2019年の7月、幻想の魚の秘密.第6弾を展示決定!お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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