星を繋ぐ猫達 《第8章26 宴②》
暑いですね。ようやく体調を調整出来るようになりましたが、外の暑さに溶けてしまいそうです皆様も気を付けて、お過ごしください。
画像は、何度となくアップしている作品。2016年6月個展作品。「橋渡しの民、風天寅次郎」「猫沢博士」です。
(作品のポストカードや原画、オリジナル招き猫作品は、高円寺 猫の額さんにて購入可能です)
では、続きをお楽しみ下さい。
《第8章26 宴②》
寅次郎博士が、カミオンのメッセージを伝えます。涙するカミシロ族、しかし、千寿氏、橋渡しの民以外の、村人達には何を言っているか解らずキョトンとしています。
それも、そのはず、このメッセージは、宇宙言語…
センジュ族長達は、コクリと頷き、満面の笑みを見せました。
次に村長が、鬼伝説を撤回した事や、神社のしめ飾りを外した事を伝えたのです。
あの、しめ飾り、実は、ただのしめ飾りではなく、彼等の神通力を封じ込める為の道具のひとつでもあったからです。ようやく、二重三重にされた封印を、全て解き放ったのです。
「さぁ、乾杯しましょう!」
村長の合図と共に、宴は始まります。
カミシロ族、地球での最後の夜は、最高のものになり、神城村の新たな門出の日となりました。
火水斗は、近くにいたカミシロの民に、質問を投げ掛けていました。あの村外れにある巨石達を、どうやって動かしたのか?と…
「あぁ、あれかね、声だよ」
「声!?」
火水斗は、目を点にしていました。
それを聞いた、寅次郎博士が、フフっと笑うと
「火水斗くん、ちょっと実験してみようか?猫君たち、協力してくれるかい」
寅次郎博士は、火水斗を、猫沢さん達の輪に入れ肉球を繋がせ、床の間に飾ってあった水晶玉を円陣の真ん中に置くと…
「火水斗くん、猫達と一緒に「にゃ~~~」と、言ってみてくれ」
十四人の猫達は、一斉にハモりはじめると、火水斗も慌てて声を出します。
すると、バラバラだった「にゃぁ~~~」は、やがてひとつの「にゃぁ~~~~~」になり母音の「あ~~~~」だけが残り、更に「阿~~~~~~」になると、何層もの重なる空気が波紋のように拡がり、真ん中にあった水晶が、ゆっくりと浮き上がりました。どんどん上昇し天井に近付いた頃…
「はい、止めて!」
水晶は、ゆっくりと、畳に降りていきます。
「す、すげー…」
「声や言葉は、ただのコミュニケーションの道具じゃない、エネルギーそのもの。そのような事、皆、薄々気づいているはず…」
目の前に現れた現象に驚く、村人達、軽いデモンストレーションを見せた後、寅次郎博士は、さも、当たり前のように説明します。
「こんな事、この世界の《常識》では、ありえないでしょう?」
火水斗達は、強く、うなづきます。
「私達は《常識》と言う《概念》の世界で構築された空間を《全て》だと信じ、外側の世界を知らない。いや、知らされていない…」
「知らされていない…?」
「このような事は、別に知らなくても支障なく、地球で生きていく上で、問題なく見える」
「…知らなくても、問題ない…?」
「全くね。ところが、私達にとっては、大問題なのです」
寅次郎博士は、広間中央へ、猫達と共に横並びに進み、センジュ族長の隣に立ち、振り向き、地球人である村人達を見つめます。
「現在、地球人達の意識は、真空パック状態のようになっていて、私達地球外生命体及び、宇宙の意思は、拒否されている。そろそろ気づいて欲しい…」
寅次郎博士は、淡々と話します。しかし、言っている意味が、作者にはイマイチ、ピンと来ない…記録係として申し訳なく思いつつ、言葉を追いかけ綴るばかり…
「な、何に気づけばいいんだ?寅次郎さん…あんた、一体、なにもんだ…?」
松方さんは、いぶかしげに問いかけます。
「…銀河救助隊のようなもの…と、でも言っておきます」
「銀河…!?あんた人間じゃないのか?」
「いえ、人間です」
松方さんは、チンプンカンプンです。
「無理に理解しようとしなくても良いんですよ。頭が混乱するばかりですから…」
急遽、猫達は、松方さんの脳が、オーバーヒートを起こさぬよう、冷却するため、ごろごろと喉を鳴らし肉球を彼の手に添えます。
彼は、短期間のうちに、起きた出来事を、処理しきれないまま、パニックを起こしているのですから…
落ち着きを取り戻した、松方さんは、問いかけます。
「き、気づいたら、どうなるんだ…!?」
「今以上に、この星を尊いものと感じるでしょう。大丈夫ですよ」
寅次郎博士は、真剣な眼差しで答えます。出来る限り刺激を与えず、優しく噛み砕いて言葉を組み立てますが、何故だか難しく聞こえ通じない…。尊い?とは…?
「尊い…?さっぱり意味が解らん…あんたの言ってる事が解らん…」
松方さんは、隣に座る村長に、涙ぐんで、訴えます。
「そ、村長…私は、一体、どうすれば良いのですか…」
「どうするもこうするも、いつもと変わらぬ生活をしてください」
村長は、穏やかで全く動じていません。
「し、しかし…今まで、否定していた物事が、全てひっくり返された私の身にもなってください…見る世界が変わってしまったんですよ…こんな、かわいい宇宙人が居たなんて…」
松方さんは、猫沢さん達を見つめます。
「彼等は、シリウスから、やって来たんですよ。宇宙は広いんです。この宇宙に、地球人だけだなんて寂しいじゃないですか?仲良くしてやってください。ところで、松方さん、神城UFO伝説の資料作りに、協力してくれませんか?」
「え!?」
「無理は言いません。気が向いたら私に言ってください。ささ、飲みましょう!ビールどうぞ」
宴は、夜遅くまで続きました。
明日は、いよいよ、彼等を、マゼラン星に送り出します。
外では、カンタスカラーナ秘密捜査部隊の猫達が、マゼラン星直通ワームホールの出現を待っていました。同時に、カルカナル達に、目をつけられぬよう見張っています。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第5弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
2019年の7月、幻想の魚の秘密.第6弾を展示決定!お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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