星を繋ぐ猫達 《第9章⑤ 海底都市ナタトリア》
もう11月、あっという間に今年も終わろうとしています。
6月の東京個展、9月の瀬戸招き猫まつり、アートマーケットにご来場くださいました方々、ありがとうございました。そしてポストカードや作品を、ご購入くださいました方々、ありがとうございました。
さて、新しい章が始まり、意外な展開になって驚く作者ですが、それもそのはず…
これは、小説の形をした、カンタスカラーナ星人、猫沢博士の指示のもと記録された、地球の姿を書きとどめている調査記録。
作者は、ただの伝達係であることを、たまに忘れてしまうようです。
画像は、猫沢さん達の使う、移動用小型船フラクラフトです。
(この物語の、ポストカードや原画など、東京、高円寺にある、猫雑貨&猫ぎゃらりー 猫の額さんにて販売させて頂いています)
では、物語の続きをお楽しみください。
《第9章⑤ 海底都市ナタトリア》
猫沢さん達は、宇宙船に、寅次郎博士を乗せ、バミューダ海域の海底地下にあると言う、ナタトリアの地を目指します。
はじめて乗る、ニャンタープライズ号、実は、相当、大きな船。普段の猫沢さん達は、地球上に降りるとき、不思議な扉をくぐり、地球猫サイズに小型化しますが、宇宙船の中では、地球人と同じくらいのサイズに戻ります。
寅次郎博士は、その扉を通過せずに、船内に入るよう案内されました。
「なんと!君達は、こんなに大きかったのか…」
同じくらいの身長になった猫達を見つめ、驚いた表情の寅次郎博士、
「テラでは、本来のサイズのままでは、エネルギー消耗が激しいので、あえて、小型化して活動しています。この方が、小回りきいて動きやすいんです」
猫沢さんは、ニコリと微笑むと、船内を案内しました。
「この船は、カンタスカラーナの猫達の技術を集結して造られています」
「ほう、素晴らしいな、久しぶりに、地球外の乗り物に乗ったよ。なんだか懐かしいなぁ…」
寅次郎博士は、巨大なエンジンルームに案内され、珍しい形の機器類を、眺めていました。
「あ、これは…?」
そこには、グランティオスのマークが…
「あ、それは、コネコピアの民のエンジニアが、取り付けてくれた部品ですね。猫達の持ち寄った技術が、分かるように、それぞれに、印が付けられています。これは、猫居グループと虎之助の印、つまり、虎之助発明のパーツです。見覚えありませんか?」
「確かに!これは当時の私達が作った部品と同じだ…懐かしいな…」
寅次郎博士は、カンタスカラーナ時代に、自身が作り上げた技術が、今の時代にも使われていることを知り、なんとも嬉しい気持ちになりました。
猫達が使う、小型の乗り物[フラクラフト]の格納庫に案内された、寅次郎博士は、驚きます。
「魚の形…これは、どうやって飛んでるんだい?」
「これは、小型の浮遊石テフテフを組み込み、操縦席のコンタクトコードで、動かします。水陸両用で、時空間移動も出来るんですよ♪この機体は、様々な星の気圧に耐えられるよう作られています!」
調査メンバー最年少でありながら、フラクラフトの開発者であり、猫谷エンジニアの助手の赤猫(あかね)君が、笑顔で答えました。
「テフテフを…?こりゃたまげた。君が作ったのか、大したものだ!」
寅次郎博士は、感心すると同時に心踊りました。地球での暮らしの中では、様々な制約や、狭い枠組みに押し込められた生活を、強いられ、危うく自分の任務を忘れてしまう位の、同調圧力的な空間に、70年近く身を置いていたため、すっかり地球人的な感覚に慣れていてしまったのですから…
地球外の猫達との交流は、とても楽しいと、そして、ようやく任務を果たせると思うと、嬉しいのです。
「まもなく、ナタトリアの領域に入ります」
アクア操縦士から、連絡が入りますと、壁にスクリーンが現れ、外の様子が映し出されました。
穏やかな海面が、広がります。
ここが、魔のトライアングル?
と、疑ってしまうような、美しい海、きらきらと太陽の光線に彩られる水面…
渡された資料を見た作者は、面食らいました。もっと、おどろおどろしい暗い海を、想像していたのですから…
「これから、海の中に潜ります」
ニャンタープライズ号は、静かに水面に接触すると、虹色の光線に包まれながら、沈んでいきますと…?
海底には、作者が、想像していた、暗く、物悲しい風景が広がりました。いつの時代かも分からない 帆船や客船、飛行機の残骸が、所々に点在しています。
まるで、墓場のよう…
そこに住む生物達は、ニャンタープライズ号に気づくと、大きな鯨でも見るように、船の回りを泳ぎ回ります。
「まもなく、都市に入ります」
突如現れた、竜宮城のような、真っ赤な門の上を通過すると、地上に戻ってきたのかと、錯覚するような、明るい空間が現れました。
「なんと美しい…」
寅次郎博士は、まばゆい光に包まれた、黄金色に輝く幾何学模様のような建築物に見とれていました。
ここが、ナタトリアの民の都市…
そこには、沢山の人々が、待っていたのです。
到着を待っていた彼等は、正装らしき、変わった紋様の衣類を身に付けていました。
寅次郎博士は、出発前に、身なりを調えスーツを着てきて良かったと、胸を撫で下ろしました。
無事に到着し船から、降りてきた寅次郎博士と猫達を、ナタトリアの人達は、笑顔で迎えます。
「ようこそ、ナタトリアへ!私は、この都市の代表の、ツジンシです」
「私は、ミスマです」
二人の代表者が、猫沢さんの肉球を、ふわりと握りました。
「再び、お会いできて光栄です。今日は、あなた達にゆかりのある者達と一緒です」
「コネコピアですか!!」
「はい、それと、もう一人います」
「もう一人…?」
「はい」
「初めまして、私は、コネコピアの子孫の、ミッシェルです。お会いできて光栄です」
「あなたが、コネコピアの子孫ですか!お会いできて嬉しいです。地球へようこそ、そして…おかえりなさい」
ミスマが、ミッシェルを優しく抱き締めました。思わず涙が溢れたミッシェルは、ミスマの優しい手に、ほおずりをしました。
「お初にお目にかかります。私の名前は、風天寅次郎(かざま とらじろう)、かつて、グランティオス、プラナダで生きていた者です。現在は[橋渡しの民]として、地球に舞い戻り、暮らしています」
ツジンシは、驚いた表情です。
「…プラナダの民、ご無事でしたか…皆は、どうなりましたか?」
「私達の民族は「あの時」全員、滅びてしまいました…私もそうです。魂だけになり、皆、バラバラになりました…」
「そうでしたか…あなた方は、最後まで、民を護ろうとしてくださいました…私達は、無事に、この地に辿り着き、今に至ります」
「…ご無事で良かったです」
「…ありがとう…そして、申し訳なかった…」
「謝らないで下さい…それが、私達の使命でしたから…」
寅次郎博士は、意識せずにツラツラと出てくる自分の言葉に、驚きつつも、冷静を装います。
そう、彼の記憶の中には、うすぼんやりとした、燃え盛るグランティオスと最後の自分の姿が、浮かぶ、靄が、かかったように断片的なイメージだけなのですから…
そんな、寅次郎博士の異変に気づいた猫沢さんは、二人の間に入り、話を分断しました。
「ツジンシ殿、ミスマ様、私達に見せたいものがあると言ってましたね?」
猫沢さんは、そう言うと、寅次郎博士を、くるりと背を向かせ、後ろにいた、猫谷エンジニアが、手を引き、猫達の輪に連れ戻しました。
「私は一体…?」
ぼんやりする寅次郎博士を、猫達は、囁きました。
「私達から離れないで下さいね」
ツジンシは、いささか、博士の反応が気にかかりましたが、気を取り直し、
「案内しましょう。着いてきてください」
二人は、マントをひるがえし、歩き始めると、猫達は、後を追うように、寅次郎博士を守るように、歩き始めました。
一体、どこに行くのでしょうか…?
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第5弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました(^O^)
2019年の7月、幻想の魚の秘密.第6弾を展示決定!お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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