星を繋ぐ猫達 《第三章 寅次郎博士とミニイクサフィーゴ》
お待たせいたしました。花粉の季節が近づきつつありますね。少し苦手な季節です。
では、物語の続きをどうぞ。
画像は、ミニイクサフィーゴと再会する、寅次郎博士とチャット博士です。
《第3章 寅次郎博士とミニイクサフィーゴ》
寅次郎博士と猫達は、一斉に、外に出ると、ブルーシートにくるまれた筒状の物体の前に集まります。
屋敷猫達も、ぞろぞろと集まってきました。
寅次郎博士は、ブルーシートを外すと、ゴールドに装飾が施された筒状の培養ケースに入れられた、黄金の魚の姿…
地球人達が見たら、古代魚の標本や、不思議なオブジェ…はたまたオーパーツと勘違いしてしまいそうな形態。
この魚の形をした不思議な物体は、猫の星、カンタスカラーナでは 、生活の為のエネルギーを作り各家庭に届けている、発電機なのです。
現在、カンタスカラーナでは、中央にある本基の巨大イクサフィーゴが、停止中であり、 当時の虎之助博士が開発した、初代イクサフィーゴが稼働中です。星の東西南北に設置されていたミニイクサフィーゴ達は、中央イクサフィーゴが停止したのと同時に、地球へ瞬間移動してしまったのです…
その中の1基が、寅次郎博士の自宅に不時着していたのです。
「やっと会えた!」
チャット博士は、満面の笑みを浮かべ、ミニイクサフィーゴに駆け寄り、まるで親友にでも再会したかのように、喜んでいます。
親友のように…いえ、親友です。チャット博士は幼い頃からミニイクサフィーゴと一緒に育ったのです。中央イクサフィーゴと、4基のミニイクサフィーゴ達とテレパシーで会話しながら、カンタスカラーナを見守り続けていたのですから…
チャット博士は、ミニイクサフィーゴに、テレパシーで、語りかけ、そっと目を閉じます。寅次郎博士と猫達は、静かに見守ります。チャット博士は、しばらくして目を開けると、皆が真剣な眼差しで見つめている事に、驚きましたが、深呼吸をして、気持ちを落ち着けました。
「チャットくん、ミニイクサフィーゴはなんと言っているんだい?」
寅次郎博士が、チャット博士の目を見つめます。
「[待ちわびました。皆、よく、たどり着きました]と…」
猫達は、どよめきます。ミニイクサフィーゴが話をするなんて、驚きです。彼等には、意思があり生きている生命体である事を、猫達は、初めて知るのです。
「寅次郎博士、あなたは、大昔に、彼等と、ある約束をしましたね?覚えていますか?」
チャット博士は、寅次郎博士を見つめます。
「約束…あぁ、覚えているとも、覚えているとも」
寅次郎博士は、うっすらと涙を浮かべて、ミニイクサフィーゴの側に駆け寄ります。約束とは一体なんなのか?
「彼等と私は、遥か過去の星で出会って以来、行動を共にしている。私がどのような状況であっても、時が来たら、必ず、私の元へたどり着くと、そして共に任務を果たすと約束したんだ。私の記憶が戻るのを、ずっと待っていたんだな…すまなかったな…」
寅次郎博士は、随分と長い間、記憶が戻らず、彼等の事を、思い出せなかった事を悔やんでいるようでした。
猫沢さん達は、ミニイクサフィーゴも、寅次郎博士と共に旅をしている事に驚きます。猫沢さん達にとって、生まれた時から、イクサフィーゴは、星のシンボル的存在であり、当たり前の光景でした。この巨大な建造物達は、かつて、どこかの星の民だったのです。
「彼等は、寅次郎博士と共に旅をしているのですか?…では、いずれ、カンタスカラーナにある、全てのイクサフィーゴ達が去る日が、やって来るのでしょうか?」
植物研究者の、猫庭博士は、とても寂しそうな表情で質問しました。
イクサフィーゴは、小さな個体を合わせると、かなりの数が、存在しています。小さなものは、自家発電機のように、使われ、多くの恩恵を受けています。
「いずれはね、彼等を必要とする事がなくなる文明が来るまでは、共に星の民達に寄り添っている。君達の星は、まだカルカナル時代を終えて間もない…当分の間は、カンタスカラーナに留まっていてくれるよ」
寅次郎博士は、懐かしみながら、話します。
「あの、寅次郎博士…現在の中央イクサフィーゴは、カルカナルの残党の手によって、無惨な姿になっている事を、お話しましたが…」
猫沢さんが、不安そうに問いかけますと、寅次郎博士は、
「あの目玉の事かい?心配しなくていい、私とミニイクサフィーゴが、地球で再会出来た事で、回避の可能性の道が現れた。君達が手伝ってくれれば尚更 、可能性は高くなる。協力してもらえるかい? 」
猫達は、一斉にうなずきました。
「ありがとう」
寅次郎博士は、物置小屋の隣にある、大きな柱を運ぼうとしています。傾いたミニイクサフィーゴを、動かそうとしているのです。
それを見た、最年少の赤猫(あかね)くんが、宇宙船の中から、フラクラフトに乗ってやって来ました。時空間移動マシン.フラクラフト、一人乗りタイプの飛行船で、星間移動や時空間移動が出来る優れたマシン。猫沢さんを始め、派遣猫一人一人に1台づつ割り当てられています。
彼は、この乗り物の開発者で、エンジニアの卵、優秀な腕を買われ、猫伊豹之助博士の元で臨時研究員として、勉強しているのです。
「寅次郎博士、このワイヤーのフックに、ミニイクサフィーゴを引っ掻けて下さい」
赤猫くんは、フラクラフトから、ワイヤーを下ろします。寅次郎博士は、ワイヤーを受け取ると、ミニイクサフィーゴの 突起部分に手を伸ばそうとしますが、身長が届きません。すると、アルハンゲルが、ワイヤーをくわえ、軽々とフックにかけました。
「アルハンゲル、ありがとう」
赤猫くんは、ワイヤーで釣り上げたミニイクサフィーゴを眺めつつ
「寅次郎博士、どうしますか?」
「とりあえず、屋敷の中に入れたいんだが、運べるかい?」
「了解しました。あの、猫谷エンジニア、手伝っていただけますか?」
赤猫くんは、整備士の師匠である猫谷エンジニアに、もう1台乗ってきて貰い、2台で運ぶのです。元々、このフラクラフトは、ミニイクサフィーゴ回収用に改造されたものですので、大変便利です。
赤猫くん達は、ゆっくりと、屋敷の中に運び込みます。猫沢さん達は、テキパキと動きながら、吹き抜けのある大広間に運び込みました。アンティーク家具に囲まれた室内に輝く、三メートル近い、黄金の魚のオブジェは、なんとも不思議な光景です。
「君達、ありがとう。ミニイクサフィーゴ、長い間、待たせたね。ようやく始動出来るよ」
寅次郎博士は、運び込まれたミニイクサフィーゴを、しみじみと眺めました。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、今年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表。2015年6月に開催いたしました(^O^)
2016年の6月も、幻想の魚の秘密.第三弾を展示決定しました!既に準備は始まっています。お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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