大肉球曼荼羅 《第1章② ロドニアストリート》
すっかり朝晩が寒くなりました。もう2019年も、2ヶ月を切りました。
早いですね。
画像は、懐かしい画像を見つけましたのでアップ、2014年~2016年の個展DM案内ハガキ
高円寺の猫の額さんと、つくば市のcafe&barGAZIOさんの時のものです。(GAZIOは2016年にクローズしています)
では、続きをお楽しみください。
《大肉球曼荼羅 第1章②ロドニアストリート》
夜、パーティーを終えた、ニャンタープライズ号クルーの猫達は、それぞれの帰路へと向かいます。
地球での任務を長期でこなしてきた彼等は、別れを惜しむ心と、一刻も早く懐かしい我が家のぬくもりに触れたい心が入り交じり、それぞれの想いを胸に、猫の星の日常へと溶け込んでいきます。
異界の星テラ(地球)での経験は、猫達にとって素晴らしいものとなり、よく似た文明を持ちながらも、全く異なる価値観や世界観に触れながら、宇宙の繋がりを感じていました。
地球での出来事は、猫の星にも反映されてしまう。
同時に、猫の星の出来事も、地球に反映されてしまう。
まるで、鏡写しのように…今まさに、再び、負の連鎖の歯車が動き出した事に気付かず、天使のような少年の歌声に魅了されている星の民達…
猫沢さんとΣ達は、地球任務中に、すっかり様変わりした通りを、帰宅ショートカットで、レトロンストリート(俗称ロドニアストリート)に入り込むと、異様な光景が広がっていました。骨董芸術に魅了された猫達が集まり、現代と過去が入り交じったような世界…以前は、小綺麗でお洒落だった通りが、まるで○○時代村のテーマパークのよう、通りには、子猫の頃に見た、大きなブラウン管テレビに似たマシンに出くわします。そこに映っていたのは、ロドニア、天使のような美しい歌声が…
周りの猫達が、うっとりした表情で彼の歌声に酔いしれる光景
猫沢さんは、一瞬、毛を逆立てたかと思うと、おもむろに、ポケットから、小さなイヤホンのような器具を取りだし耳に当て通りました。
耳障りなのです…。
あちこちに貼られた、ロドニアの電光ポスターは、とびきりの可愛らしさ全開。
本屋に入れば、彼の表紙、表紙、表紙!!
猫沢さんは、適当に1冊を選び、電子ニャン通貨を通します。
息抜きに、カフェに入ってみようと扉を開けると、彼の曲が大音量…
一瞬、閉口し、用事を思い出した素振りで、ソッと扉を閉めたのです。
「ここは、まるでテラのようだ…この町の猫達…気は確かか…!?」
目を白黒させ立ち尽する猫沢さんを、Σ‐41は、急かします。
「猫沢博士、長居は無用です!」
ハッと我に返り早足で通りを抜け、いつもの街並みに出ると、胸を撫で下ろしました。
「ありがとう、よっちゃん(Σ‐41)、もう少しで呑み込まれるところだった。あの場所は異常だ…気分が悪い…」
「博士の聴覚は、他の猫達よりも鋭いのですから無理もありません、これを使って下さい」
「これは?」
「猫居博士からのプレゼントです。新型の特殊ノイズキャンセラーイヤホンです」
「ありがたい…」
猫沢さんは、早速包みから取り出し装着、たちまち穏やかな表情に戻っていきました。
「助かった…」
再び、猫沢さんは、通常の通りを歩いていきます。あの通りほどではないのですが、ちらりと通りすぎる店先等から微かに聞こえる、美しい歌声や、可愛らしいポーズを決め映し出されるロドニア少年が、街角のスクリーンを賑わしています。
「大丈夫だ、なんともない」
肉球を握り締め、自宅を目指します。
星中の猫達が、ロドニア少年に魅了される中、猫沢さん、および、少数の猫達が、妙な違和感にさいなまれる現象、これは一体なんなのか?
単なる好みの問題ではない気がしてなりません。
久々の自宅に隣接する研究所に、辿り着いた猫沢さんを、留守を守っていたスタッフ10名が、大量の紙吹雪をぶちまけ歓迎します。
「猫沢博士!!お帰りなさい!!!!」
「た…ただいま」
埋もれた紙吹雪の山から、這い出ると、スタッフ達が、取り囲み、ぷにぷにと肉球握手の嵐です。
「猫沢博士、テラでのお話聞かせてください!」
「いやいや、一刻も早く休息を取ってください!」
「見てください!!Σ達の為のメンテナンス装置を作りました!!」
入れ替わり立ち替わり、目をキラキラさせたスタッフ達が、猫沢さんの周りで、やいのやいのと、騒いでいます。
研究所の食堂に、誘導されると、帰還を祝う可愛らしい飾り付けが目に飛び込み、猫沢さんは思わず笑顔を見せます。
ですが、すぐさま、真顔に戻り…
「帰宅早々ですが、皆にお願いがあります。今すぐ調べたい事がありますが協力してくれますか?」
「はい!!」
猫沢さんは、先程、購入した本を包みから、取り出すと、皆の態度が凍りました。
「…猫沢博士、この子のファンなんですか?」
「いえ、この子の歌声と曲の分析をしたいと思っていますが、なぜ、そんな驚き方するんです?」
「博士、この子に近づいてはいけません!!」
若い新入りらしきスタッフが、プルプル震えています。
「君が、今年入った三毛野くんですね。はじめまして所長の猫沢です。なぜ、あの子に近づいてはいけないのですか?」
「私の友が、この子の歌を聴いて、おかしくなってしまったんです…」
「なるほど…」
「あの子猫には近づかないで下さい!!危険です!」
彼は、猫沢さんを止めようとしますが、
「この私が、そう言われて素直に「はい」と答えると思いますか?」
猫沢さんは、微笑みます。
スタッフ達は、微笑み返しました。
止めても無駄、と言う事を熟知していたからです。
「ありがとうございます。では、猫居博士に「6か月後辺りに会場の手配をお願いします。閉鎖的ではなく開放的で大きな所が好ましい」と、伝えてください」
「会場?まさか!!」
「そうですよ。面白くなってきました♪」
猫沢さんは、一体、何をしようとしているのか?
新入り猫が、口をポカンと開けていると…
「三毛野、良かったな。これで、君の友猫も助かる」
「大和先輩!本当ですか?会場って何ですか?何をやるんですか?」
「君は、まだ、猫沢博士の事を、よく知らないと言っていたね」
「はい…テラで活躍していた事以外は、あまり…」
「そのうち分かるよ」
先輩猫の黒猫が、不敵な笑みを浮かべました。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】SF物語を展開中です。
そんな楽しい猫の星の世界観第6弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
(※ このblog内の画像や文章を無断で転載等をする事は、ご遠慮下さい)
猫の額さんのHPは、ここをクリック↓
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