大肉球曼荼羅 《第1章③ ロドニア・ニャンパニー》

寒くなりましたね。暖房器具が手放せない季節になりました。
 
画像作品は、今は亡き、総合商社カルカナルの社長、故ウィラード氏、生前は、とても紳士で社交的な彼の裏の顔を知る猫は、現在では数少ない…
 
では、物語の続きをお楽しみください。
 
《大肉球曼荼羅 第1章③ ロドニア・ニャンパニー》
 
猫沢さん達が帰還して数日後の事、何事もないように見えるカンタスカラーナの日常は、少しずつ変化していきます。
 
ロドニアケーキを出した洋菓子店は、大人気、公式店として認められ、あれよあれよと言う間に、行列がどんどん伸び大繁盛。
同時に、ロドニアストリートに、新たな店が続々とオープンしていきます。日本で言う駄菓子屋のような店が建ち、随分昔に販売中止になっていた、お菓子達が復刻、猫沢さんと同年代位の猫達が、懐かしさのあまりに殺到します。
 
その中には、昔、猫沢さんが大好きだったお菓子もありました。
何も知らない友猫が、猫沢さんにと、プレゼントに持ってくるのですが…
試しに、一口だけ食べてみるも…ショック症状を起こし倒れ込み、強烈な甘味と薬臭さで苦しむと、ふらつきながらも研究室のスタッフに手渡し、分析器にかけられるのでした。
 
「こんな味だったのか?私は子猫の頃、これを美味しいと感じていたのか…?」
 
あの頃の思い出が砕け散る…
 
ナニカガオカシイ…
 
包みの裏面の発売元は「ロドニア・ニャンパニー」
彼の事務所が、記載されています。
タレントの事務所だと言うのに、食品を扱うとは…裏面の原材料欄は、かなり省略…
猫達は、そんな事、全く疑問に思う事もなく、大喜びで「おいしい、おいしい!」と、口に運びます。
 
分析結果に青ざめる猫沢さん達…
 
「猫沢博士…これは、ニャッカリイウムですね…この物質は、以前、毒性があると言われ使用中止になった物質ですよね…ウトゥサの何倍もの甘さで、コスト削減出来ると、夢の物質ともてはやされたもの…」
「ニャッカリイウムだったのか…なぜ、こんなものが今頃になって使われ始めたんだ…?」
「近年に渡りニャッカリイウムは、無害だと言う噂が広まり、単価も安いこともあり再び使われ始めたと…」
「そんな筈はない!私が、昔、調べた限りでは、ニャッカリイウムは、ウトゥサやニャクロン同様有害だ!」
猫沢さんは、頭を抱えます。
「博士、先日のパーティーで出されたロドニアケーキには、ウトゥサが使われています」
「やっぱり…」
「こちらも、つい最近、使用が解禁されたと言う噂が出ています」
「解禁?噂の出どころは?」
「恐らく、ロドニア周辺です…彼の背後に、お抱え科学者がいるとの噂です」
「お抱え科学者?」
「はい、単なる噂なのですが、その科学者が「これらの物質は無害で安全、昔の有害説は撤回し白紙に戻す」と、ふれまわっているそうです」
「誰だ?なんて馬鹿げた事を…」
 
猫沢さんは、駄菓子の箱を握り潰しました。
 
ロドニアの周りには、謎が多く、彼が彗星のように現れて1年も経たない間に、芸能活動以外の事業が目立ち始め、提携を結ぶ企業が増えていると言うのです。
コンサートやイベントで、可愛らしいダンスや歌声を披露し、甘くて美味しい夢をキラキラ振り撒きます。
 
「猫沢博士、猫谷さんが来てます」
「分かりました。今、行きます」
 
応接間の扉を開けると、ラフな普段着の猫谷エンジニアが、ソファーにかけて待っていました。
 
「よう、猫沢、あれから休めたかい?」
「なんとかね、どうした?」
「例の事だがな…」
「何か分かったか?」
「ロドニアの身元を調べてみたんだが、居住者登録や血縁者の情報がどこにも、見当たらなかったんだ…」
「どういう事だ?彼には両親はいないのか?」
「いない…出生の記録がないんだよ…不気味じゃないか?」
 
二人は、眉間にシワを寄せ、顔を見合わせました。
 
「マネージャーのポイスンと、秘書のケーミカーラが、ロドニアの面倒を見ているところまでは分かった…周りには親子だと思われている」
「マネージャーと秘書?彼らの身元はハッキリしてるのか?」
「あぁ、ごく普通の猫市民だったよ、雇われの身だろう?」
「事務所の社長は?」
「それが、分からないんだ。私は、ロドニア自身ではないかと思うんだがな…」
「社長は子猫ロドニア?」
「とにかく、まだ、真相は不明だが怪しいうえこの上ない、とりあえず、これだけ伝えておく。ところで、猫居博士から聞いたんだが、大きく出たもんだな?何をぶっぱなす気だ?」
「ただの研究発表会さ♪場所が決まり次第、正式にお願いするよ」
「了解。楽しみにしてる♪」
 
二人は、ニヤリとし、肉球グータッチをしました。
 
「ところで、あの時のパーティーに出されたケーキを調べてみたんだ」
「どうだった?」
「ウトゥサが使われていた、どういう経路で入手したか調べてくれないか?」
「分かった」
猫沢さんは、ポケットから、もうひとつ菓子を取り出して見せると…
「うわ!!懐かしいな󾬅どうしたんだ?」
「復刻版だよ、友猫に貰ったんだが、ニャッカリイウムが使われている」
「この物質は、既に製造していないはずだ…」
「この菓子は、昔、カルカナルが出していた物だと記憶している…子猫時代の事で、うろ覚えだが…調べてくれ」
「カルカナル…彼等は当の昔に解体され、一族もろとも途絶えてしまった筈だ…」
 
総合商社カルカナルは、昔、星の猫達に、喜びと苦しみを与え長きに渡り栄えた…
もう、随分と昔の事で、現代の猫達には、馴染みも薄く知っている者も少ない、過去の多くの悪行三昧を知る者は、震え上がるほどの存在。
 
「まだ、この星に、カルカナルの末裔が居るとしたら…何かを知ってるかもしれない…あと、もうひとつ、ロドニアの後ろに、お抱え科学者が居るらしいと言う噂を耳にしたんだ」
「なるほど、あの子猫…色々とキナ臭いったらありゃしないな…」
 
猫谷エンジニアは、猫沢さんが入れた、ニャンコフィーを飲むと、
 
「あーうまい!」
 
久々に飲む、猫の星名産の木の実コフィーで、作られた飲み物は、体内に溜まってしまった毒素を出すと言う力を持っていて、猫沢さんのお気に入りです。テラ滞在の時も、ストックを沢山持っていったのですが、最初の数ヵ月で無くなってしまい、久しく飲んでなかったと、帰還以来、色々アレンジして飲んでいます。
 
猫谷エンジニアは、しばらく雑談をし、笑顔で帰っていきました。
 
「天使ロドニア」を取り巻く不可解な謎と、絶えた大企業「カルカナル」の陰…
一体、猫の星で何が起きているのか…
 
[つづく]
 
 
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※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
 
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