大肉球曼荼羅 《第1章⑥ 森の長に会いに》
いよいよ2020年が、始まりましたね。
今年もよろしくお願いいたします。
今回の画像は、2019年の個展にて発表した「森の妖精猫」普段は使わない色鉛筆を使用し、製作しました。
評判の良かった1枚です。
では、物語の続きを、お楽しみください。
《大肉球曼荼羅 第1章⑥ 森の長に会いに》
翌日の早朝、猫沢兄弟は、猫庭博士の自宅へと向かいます。彼の家は、深き森の少し奥にあり秘密のトンネルを抜けた所、ここは、かつてカルカナルに命を狙われた東の猫の民達が、隠れ住んでいたシェルターがあった場所、現在は、その一部を猫庭博士が研究所兼自宅として使っています。
「ふぃー 遠いなぁ」
「兄さん、休憩する?」
「いや、トンネルが見えてきたじゃないか、もう一息だ」
二人は、黙々と進み、トンネルに入ると、時空がネジ曲がったような奇妙な感覚に襲われます。
「まるで、トリックアートの中にいるみたいな気分だな…」
「このトンネルは、この森に招かれた者だけが通れる異空間、私達のご先祖は、この森に守られていたんだ…」
トンネルの先に、まるで、絵本の世界に出てくるような建物が現れました。
「おはようございます。猫沢です」
「いらっしゃい、お待ちしていました」
猫庭博士は、にっこりと微笑むと客室に招き入れます。
風さんが、どっかりとソファーに腰かけると、スッと、猫庭博士が、ニャーティーとスーニャンを出してくれました。
「んまい!!」
「ありがとうございます。焼き立てのニャンベリースーニャンです」
猫沢さんも、熱々のスーニャンを頬張り、顔がほころびます。
猫庭博士は、早速、祖父の十三郎博士の書斎から持ってきた資料を広げ
「これは祖父が残した「橋渡しの民」の記録です。昨夜、見つけました」
「なんと」
「当時、虎之助博士を筆頭に7人の「橋渡しの民」達が活動していました。テラの時と同じように彼らはチームを組み、カンタスカラーナ救済を成し遂げています」
「では、現代に繋がる「橋渡しの民」を探すにはどうすれば良いのでしょうか?」
しばらくの沈黙の後…
「あぁっっっ!!!」
突然、猫庭博士は、すっとんきょうな声をあげました。
「猫居博士の事を忘れてました!!そうです!彼は、虎之助博士の直系子孫!!!彼に聞けば、手がかりが見つかるかもしれません!!」
「にゃ!!!そうだった!!!すっかり忘れてた…何故か、私の頭の中では、虎之助博士と豹之助博士の繋がりを忘れてしまう…」
うっかり猫沢さんは、早速、通信機でメッセージを入れます。
「よし!これで大丈夫「橋渡しの民」の件を伝えた」
ホッとする横で、風さんが、
「豹ちゃんて虎之助の子孫なのか?ただの裕福なボンボン科学者だと思ってた」
「兄さん、彼は、ヒョウヒョウとして見えるけど、実は凄いよ」
「ひょえー」
猫沢さんの友猫、猫居豹之助は、先祖代々イクサフィーゴを管理する一族のひとり
彼は、学生時代、猫沢さんの研究に魅了され、長年の付き合いになり現在に至ります。
「祖父の記録では「橋渡しの民」達には、目立った特徴はなく普通の民として生まれ、覚醒時期を迎えた者が、テレパシーでサインを送り仲間を呼び寄せてたそうです。虎之助博士が最初の覚醒者です」
猫庭博士は、丁寧に付箋をしておいたページをめくり、一枚の集合写真を手に取りました。当時の橋渡しメンバーと共に、猫庭博士そっくりの若き日の十三郎博士と、凛々しい虎之助博士が写っていました。
「テラでは、大きく覚醒時期がずれてしまっていたが…」
「イクサフィーゴと連動して行動するチームでしたから、私達の星でのイクサフィーゴクローン開発の影響でずれてしまったんですよ…」
「と言う事は…もしかすると、あのクローンに生えたカルカナルの芽は…」
「新たなる課題と言うタイムラグ…?ひょっとして私達は、なんらかの法則を、無視してしまったからかもしれません…寅次郎博士は、現代の、この星に生まれた「橋渡しの民」の力を借りよ。と言っていましたね…」
猫庭博士と猫沢さんは、お互いの顔を見合せ、うなずきました。
風さんは、テラでの出来事を、全く知らないのでチンプンカンプンでしたが、なんとなく、心当たりがあり、1年ほど前から店によく訪れる猫の顔が浮かんだのです。
3人は、しばらく雑談をし区切りがついたところで、出掛ける準備を整え、いざ、出発
「さぁ、行きましょう!長(おさ)の元へ!」
猫庭博士の指差す方向に、先程、通ってきたばかりのトンネルが有りました。
「え、また戻るんですか?」
「はい」
トンネル抜けて、元の景色へ…
「ここから南へ進むと「マンタの森」へ辿り着きます」
「マンタの森?」
「マンタに乗って長の元へ行くのですが、森に向かう途中が、少しばかり険しいので足元に気を付けてくださいね」
「マンタって猫を乗せるんですか?」
「いいえ、普段はそんな事しませんよ。今回は特別です。マンタの頭(かしら)にお願いしたんです。歩いて行くには遠すぎます。1日では辿り着けません…」
「そんなに遠いのかい??」
「遠いです」
「あの、さっきから、疑問に思ってたんですが…猫庭博士の家の近くにある大木が、長ではないのですか??」
「いいえ、あの木は長の子供です。大昔、虎之助博士が長から小枝を1本貰い、カシイの木に挿し木した分身のようなもの」
「分身…?」
「さぁ行きましょう!!」
3人は、森の奥にズンズンと進んでいきます。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】SF物語を展開中です。
そんな楽しい猫の星の世界観第6弾を、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
(※ このblog内の画像や文章を無断で転載等をする事は、ご遠慮下さい)
猫の額さんのHPは、ここをクリック↓
0コメント