星を繋ぐ猫達 《第3章 祖父 猫庭十三郎の事》
先日、5月10日から始ま。た、太田宿 中山道会館での展示、好評のようで嬉しいです。
画像の作品は、猫庭博士の子供時代です(新作です)
では、続きを、お楽しみください。
《第3章 祖父.猫庭十三郎の事》
猫達を乗せた宇宙船[ニャンタープライズ号]は、異次元空洞を使い、主要基地である、サンプル1号の自宅に向かいます。
移動中の宇宙船では、猫沢さんが、改めて、猫庭博士の祖父の猫庭十三郎博士について、話を聞いていました。
猫庭十三郎は、かつて、猫伊虎之助博士と共に、深き森のコロニーで、畑を耕し野菜を育て、カルカナル磁場の影響で壊れてしまった猫達を助け歩き、カルカナル時代崩壊に向かいイバラの道を歩んできた活動家猫の1人です。虎之助亡き後も意思を受け継ぎ、コロニーの中心となり活躍してきたのです。
「猫庭博士、ありがとうございます。あなたのおじいさんが、やってきた事を、寅次郎博士達は、テラの、あの村で実行していると言う事ですね…?」
「はい、あの村に住んでいるテラビト達の表情は、深き森のコロニーの猫達同様、とても生き生きとして、明るい印象を受けました。とても懐かしいです。私の祖父達がやって来た事が、テラで役立つ日がやって来たのかもしれません…」
猫庭博士は、穏やかな表情で、村の印象を話していました。
「ですが…心配な事があります…祖父は、今でこそ、カンタスカラーナでは、恩猫や英雄として伝えられていますが…虎之助博士と出会った頃からの数年間、いや、数十年間は、カルカナル派の猫達や、カルカナル社を信じていた一般猫達に、罵倒され、酷い扱いを受けてきました…祖父の過去を知る猫達からは、裏切者扱いです…そして、祖父自身もカルカナル商事に勤めていた頃の、自分が行ってきた事を、悔やんでいました…星の猫達を壊した加担者として……」
猫庭博士は、ぶわっと涙が溢れます。祖父の悲しむ背中を見てきた、幼少時代を思い出していたのです…。
「お気持ち察します…おそらくテラでも、同じ事が起きる…いや、起きている現実を目の当たりされ、さぞ心を痛めた事でしょう…」
「はい…かつて祖父が開発し、後に封印した技術が、テラ中で猛威を奮っていました…それに気づき、対抗して動き出したテラビト達が、潰されていく姿が…祖父達の姿と重なります…」
猫庭博士は、溢れる涙をハンカチでぬぐいます。
彼の祖父の猫庭十三郎は、カルカナル全盛時代、ウィラード一族が経営する大企業カルカナル商事に勤め、農作物の遺伝子組み換え等の研究 開発に携わっていました。当時、数々の功績を残し優秀な猫として、尊敬されていました。のちに、虎之助博士と出会い、彼が開発して来た作物達が、星の生態系を蝕み、猫達の体や精神を壊してしまった事に気づかされ、虎之助博士と共に、カンタスカラーナ再生の道を選んだのです。
「猫沢博士、私が、この星へやって来た意味が解った気がします。私は、テラビト達に伝えなければいけません…祖父が封印したはずの技術の恐ろしさを…彼らに…」
猫庭博士は、カンタスカラーナシダーのペンダントを、強く強く握りしめました。
ほどなくして、宇宙船は、サンプル1号宅に到着しました。
その頃、サンプル1号は、黙々と、猫沢さん達の物語を、まとめていました。
サンプル1号とは、この物語をブログ上と、平面作品展示(個展)の場を使い、猫の星カンタスカラーナの事を伝える為に、猫沢さんに抜擢された調査対象のサンプルで、無名の地球人です。
そして、ストーンブロック(遮断石)(通称[漬物石])の蓄積が非常に多かった人物であり、寸での所で蓄積崩壊を免れたのです。猫沢さん達と接触後、急激にストーンブロックを取り除き、あたふたしながらも、明確にカンタスカラーナの状況を伝える努力中なのです。
「あ、猫沢さん、おかえりなさい。どうでしたか?寅次郎博士は、どんな様子でした?」
「良好です。あなたのお陰で、寅次郎博士を発見出来た事に感謝します」
「良かったです!」
「新たな事実が発覚しました。あなたは、この事柄を調べ、テラで起きている現象の中にある事柄と照らし合わせ、吟味し、自らの力で実行して下さい」
そう言って、猫沢さんは、日本語に訳された、カンタスカラーナのカルカナル時代の資料の束を、ドンッと置きました。
サンプル1号は、目を丸くしました。
「あの…詳しく説明して下さい」
「とりあえず、2014年の夏に中断していた、食のレポートを再開してください」
猫沢さんは、淡々と答えました。
「え?」
サンプル1号は、ビックリです。食生活レポートが、2014年の8月の個展を境にストップしていた事を思い出しました。今は、2014年の秋です。
「あれから、どうですか?なにかしらの体の変化はみられましたか?」
突飛な質問に、サンプル1号は、驚きます。猫沢さんから、地球人の体に蓄積された、ストーンブロック(遮断石)の恐ろしい実態を知らされてから、約一年が経とうとしています…。
サンプル1号は、長年の慢性疲労感や、体の冷え、背中の痛みを伴う胃痛や不快感、様々な体調不良を抱え過ごしていました。まさか、その原因のひとつに、聞いた事がないような物質があるとは、思ってもみなかったのです…。
そして、その物質が、地球人達の体内外の蓄積し続けた結果、遥か遠い星に住む猫達に、悪影響を及ぼしているとは、夢にも思っていなかったのです…。
サンプル1号は、これは大変とばかりに、食生活を改めようと、必死で資料を集め調べはじめました。サンプル1号は、すこしづつ、出来る範囲で実行して来たのです。
本当に、こんな事で、猫の星カンタスカラーナの危機を、救う事が出来るのか?と…
「あ、色々改善されましたよ。以前より少し楽になりました。でも、まだ何か足りないような気がしてならないんです。ちゃんと調べて実行しているつもりなのに…足りないんですよ。一体、何が足りないんでしょう…?」
サンプル1号は、首を捻ります。
「知識です」
猫沢さんは、サンプル1号の問いに、容赦なくバッサリと答えました。
「知識…?」
「あなたは、あれこれ調べて知った気になってますが、未だに、この世界での常識と言うものに囚われています。まず、あなたの中にある、常識と言われているものを疑いなさい」
猫沢さんは、小さな座布団にチョコンと座ると、助手のマシン猫Σ‐41が、持ってきた、寅次郎博士から、お土産に貰った手作りクッキーをモサモサ食べながら、何やら端末を使い作業をしていました。
サンプル1号は、猫沢さんが持っているクッキーに、おいしそう!と、手を伸ばそうとすると、華麗な猫パンチを喰らいました。
「まず、レポートを仕上げて下さい。その後に、このクッキーをあげます。寅次郎博士の事も興味あるでしょうが、先に課題を片付けてからですよ」
そう言って、ゴロゴロと寝転がり、くつろぎながら、作業をする猫沢さんに、サンプル1号である作者は、なんて意地悪な猫だろうと思いつつ、書きかけだったレポートの続きを、あわてて綴る事にしました。
寅次郎博士の登場と共に、新たな展開に心踊る猫達と、新たな課題と対面するサンプル1号。
その頃、寅次郎博士は、猫のアルハンゲルと会話が弾みながら、夕飯を笑顔で頬張っていました。アルハンゲルの話す、カンタスカラーナ時代の吟遊詩人ケイオス‐ハーオスの頃の話が、たいへん面白いのです。
寅次郎博士は、アルハンゲルの凍てついた心を解きほぐし、彼の父親を助ける方法を、考えるのでした。
そして、それぞれの夜が、静かに流れていきました。
[第3章 おしまい]
ようやく、第3章が、終了しました。第4章に入ります。
不思議と好評でありました、サンプル1号である作者の、食生活改善レポート再開です。
おたのしみに!
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
早いもので、この物語も三作目を迎えます。この物語は、猫の星カンタスカラーナと地球を巡る、壮大なスケールでお送りするSF猫物語です。
そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、今年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表。昨年、2015年6月に開催いたしました(^O^)
2016年の6月24日(金)~7月6日(水)幻想の魚の秘密・第3だん虚空高舞上]を開催。会場は、同じく、猫の額さんです。お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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