星を繋ぐ猫達《第4章 テラビトサンプル1号観察記録 秋①》
毎日、暑い日が続きますね。
2週間に渡る個展が、無事に終了いたしました。ありがとうございました。
ブログ小説共々、リアルでの作品展示も、よろしくお願いいたします。
では、続きをお楽しみ下さい。
画像は、今回の個展作品
[橋渡しの民 風天寅次郎(かざまとらじろう)]
使用画材 三菱ユニポスカ コピック
《第4章 テラビトサンプル1号観察記録 2014年秋①》
サンプル1号の前に現れた幾何学模様、テラビト体内を抽象化した映像は、彼女自身が作り出したイメージと重なるように作られている。
「猫沢さん、これは一体?」
「これは、あなたの脳内にあるイメージです。これを使って、あなたに足りない何かを探し出しましょう。これは、あなたが、生まれてから、これまで体内に取り込んだ幾何学模様達です。この形は何を連想しますか?」
私は、少々、形の崩れた幾何学模様を呼び寄せ並べ、彼女に見せた。
「この幾何学模様は、私が十代の頃…専門学校時代、朝御飯は、卵ご飯、昼食は、定番の菓子パンとパック牛乳、時々、チェーン店のラーメン…食生活が崩れ始めた事を思い出しました。そしてこれは二十代辺り…コンビニで働いた数年間…廃棄になったコンビニ弁当やスィーツを食事にしていました…」
サンプル1号は、年代順に幾何学模様を並べた。だんだん、イビツになっていく…これは同時に、彼女の心の変化をも示している。私は、静かに観察していた。
「これは十年以上前の私、当時、食事の大半は、コンビニ弁当とスィーツと菓子パンを、沢山食べていた時期です。頭の働きが鈍くなっていました…体調も悪く気力もない…自分は、もしかして、精神的に病気なのではないか?と思うくらい病んでいたのですが、なぜか、心療内科に行かず、気功を習いに行き始めました…今思えば、あの頃の異常な食欲は…ストレスからだったと思います。そして、当時の知識のない私は、何も抵抗もなく、添加物等、大量に入った物を普通に食べていました…ただ、お腹が一杯になれば良いと考えていた時期ですね…」
「当時のあなたは、自分の慢性疲労体質が、生まれつきだと思い、食の事などは二の次としていたんですね…この現象は、あなた一人だけではなかった筈です…」
私は、サンプル1号の幾何学模様達の細部を覗きこむと、漬物石に潰されかけたミトコンドリアを見つけた。そして、何本も脳神経回路が寸断されている。
サンプル1号は、次の幾何学模様を手に取った。
「あ、これは、猫沢さん達と出会った頃です。ようやく、食事の大切さに気づいた頃…」
「少しづつ形が整い始めましたね」
くすんだ幾何学模様から、輝きを取り戻し始めた幾何学模様を手にした、サンプル1号。この時、ようやく自分の中に閉じ込めていた何かと体面を果たした。と言っていたが、追々説明するとして割愛しよう。
サンプル1号は、手元に集めた、それらを、しげしげと眺めている。まさか自分の心や身体が、こんな形で見られるとは思わなかっただろう。
私達の星では、ごく普通の技術である。
「この中を覗いてみてください」
サンプル1号は、興味深く覗きこみます。
私達と出会ってからのサンプル1号の食生活は、野菜料理が増え、気持ちも穏やかで安定している、整った幾何学模様。奥を覗くと穴がポッカリと空いているのを見つけた。
「猫沢さん、この穴はなんですか?」
「食生活を変えた事で、修復された所と、新たに破損した場所です。野菜中心で薄味にした事で、亜鉛やビタミンB12が減り、穴が空いたのです。そこに、砂糖を使った、お菓子類を過剰摂取した事で、同時にミネラルも消失します。現在のあなたは、慢性的な倦怠感をなんとかする為に、やっきになっていますが、逆の事をやっていますね。何か思い当たりませんか?」
「えーと…お腹が空きすぎると頭がフラフラしてだるくなるので、すぐに何かを食べ落ち着きます。しばらくすると、まただるくなって、何かを口にします…」
「…典型的な低血糖症だと思われます。そして、糖質過剰摂取と減塩と野菜過剰摂取で栄養失調です」
「低血糖と栄養失調ですか!?この時代に栄養失調?」
「元々雑食の、あなたが、急に浅い知識で始めた食生活改善には、落とし穴もあるんですよ。ひとつ見落としがあります。なぜ、薄味の味付けに変更したのですか?」
「味の濃い食べ物は、体に良くないと、何かに書いてありました。特に塩分は…高血圧とか腎臓に悪いとか…」
「では聞きます。テラビトの生命の源は?あなた方は一体、どこから生まれ進化をしてきましたか?」
「んーと…?海…あれ?」
サンプル1号は、何か気づいたのか、ハッとした顔をしている。
「テラビト達の祖先は、海の中で生まれ、陸から上がり、地上で暮らしています。体内には、海の成分と同じ体液で満たされている…これを考えたら、あなたがやっている事は、随分とコッケイです」
私は、ようやく、減塩にいそしむ無知なサンプル1号に、警告する事ができた。
野菜摂取と咀嚼力が増した事は、良い事である、しかし、これらの効果を台無しにするように、白砂糖を大量に使った菓子類を食べ続け、減塩を進めたら本末転倒である。
全く、意味がない
「猫沢さん、私達が今まで、教えられてきた健康方法って…?」
「あなた方が、今まで、何も疑問もなく、信じて過ごしてきたのが、不思議なくらいですよ」
[つづく]
2016年6月24日から7月6日の2週間、東京 高円寺、猫の額さんにて行われました個展が、無事に終了しました。
また、来年の同じ時期に、猫の額さんにて個展開催が決定しましたよろしくお願いいたします
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
東京.高円寺[猫の額]さんでの個展とブログ小説の連動型です。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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