星を繋ぐ猫達 《第4章 テラビトサンプル1号観察記録 2014年秋③ 塩》

nうやく梅雨も開けました。暑い夏がやって来ますね昔、

では、物語の続きをお楽しみ下さい。

画像は、個展作品[猫沢博士、帰還]カンタスカラーナに帰ってきた猫沢さんの、優雅な飛行シーン、乗り物は、物語の中に、よく出てくる、フラクラフトです。お魚の形をしています。

画材、三菱ユニポスカ、コピック




《第4章 テラビトサンプル1号観察記録 2014年秋③塩》

私は、サンプル1号の戸棚から持ち出した、ある物を見せた。

「あ、お菓子…」

「前にも言いましたが、甘いお菓子類は、体内から大量なミネラルを消失してしまいますよ。仕事柄、止められないのは分かります。あえて、止めろとも言いませんが、あなたが、減塩し甘い物を大量に摂取すれば…さらにアンバランスな体になります。本当に必要な物を、ご自分の体に聞いてごらんなさい」

私は、つい最近、別のテラビトサンプルが手に入れた、ある物を手渡した。

実は、サンプル1号の他に数名、サンプル達がいる、1号よりも漬物石除去が既に進み、一歩先を行く彼等から託された物である。

「これは、塩ですね…この塩は一体?」

「これは、あなた同様サンプルとしてコンタクトを取っているテラビトから受け取った、高知県辺りで作られた天日塩です。彼等から他のサンプル達に、必要な時が来たら渡して欲しいと託されました…彼等はテラビトの中でも特殊な種類と判明しています」

「特殊なテラビト?私の他に、サンプルの地球人は何人いるんですか?」

「30人位です。あなたが、夏に東京個展をした時に、ギャラリーに訪れ、僅かですが、コンタクトが取れたテラビト達もいます。猫好きばかり集まるお陰で、良いサンプル達と出会えましたよ。ちゃんとお礼をしておいて下さいね」 

私は、サンプル1号に天然の天日塩を渡し、説明を続けた。 

「あなたが手に取っている物は、太陽の力で作られた塩です。沢山のミネラルをふくみます。甘い物を食べた後に失った、ミネラルを補給しなさい」

「そんな事が、可能なのですか?」

驚いたサンプル1号は、まじまじ塩を見つめている。粗めの結晶だが美しい塩である。

「甘い物を食べるなと制限すれば、逆にストレスになり、別の意味で、体内バランスが崩れます。ならば後から補給すれば良いのですよ」

「実は、私、悩んでいたんです。頭で分かっていても、甘い物を、なかなか止められないんだと…だけど、まさか、それらを、食べた途端にミネラルが失われるとは思いませんでしたし…すぐ補給出来るのが、天然塩とは思いませんでした…」

「塩は敵ではありません。良い塩と言うのは、
適度な塩辛味の塩化ナトリウム、
甘い無味の硫酸カルシウム、
旨い苦味の塩化マグネシウム、
コクのある苦味の硫酸マグネシウム、
キレのある酸味の塩化カリウムの五つのバランスが取れたものを示します。精製された塩には、塩化ナトリウムだけ残され、あとのミネラルは排除されますので、ただの塩辛さしか感知出来ません。そんな化学塩を大量に使われたなら、のちのち体にも、大きな影響も出るでしょう。それが減塩推進のカラクリです」

「……」

「従って、あなた達は「減塩」と言う言葉に踊らされているんですよ」

「猫沢さん、では、減塩の弊害と言うのは一体どのようなものですか?私には、まだピンと来ないのです。テラビトの体の成分が、海水と、ほぼ同じなのは、なんとなく分かりました。もし、足りないとテラビトは、どうなるんですか?」 

「冷え性や無力感、胃腸不良、立ちくらみ、目眩等です。塩分摂取不足以外では、私が先程、あなたに言った、体内塩分を相殺してしまう食品を多く摂取してしまう事も含みます」

「私、冷え性で低血圧です」

「朝起きるのが辛いでしょう?」

「凄く辛いです。だるいし、やる気も出ないし…」

サンプル1号は、いつも疲れた顔をしている、動作も、他のテラビトと比べ鈍いのだ。

「それはそうでしょう。血圧を上げるエネルギーが低下していては、うまく起きられる訳がありません。朝からガス欠状態なのは、適度な塩分とミネラルが不足した結果です」

「…意識していませんでした…」

「あと、塩分不足は、風邪をよくひいたりします。免疫力が低下して、外から入ってくるウィルス達に負けて感染してしまうのです。風邪ばかりではなく、胃腸の中もバランスが崩れ、あらゆる生活習慣病の引き金になるんですよ」

「私、年に何度も風邪を引きます。塩が足りないだけで、多くの不調が出てしまうんですね…」

「塩に関する、エピソードをひとつお話しましょう。昔、長崎で落ちた原爆の話は、ご存じだと思います。その時に、ある医者が、被爆者に、玄米飯に多くの塩をつけたおにぎりと、塩辛い味噌汁を毎日食べさせ、甘い物を避け、砂糖は一切避けさせたのだそうです。それらを徹底した結果、酷い原爆症を患う事もなく過ごせたと言う話があります。それくらい、塩は大切な物だと言う事を、多くのテラビト達は知らないと聞きます…この話は、もっと広まってもおかしくないと思うのですがね…」

私は、とても不思議に思っていた。このような素晴らしい話が存在しているのに、現代では、全く生かされていないのだ。

減塩を意識して過ごしている、ヒノモトのテラビト達を観察していると、魂を抜かれたような精気のない表情に驚かされるのだ…

「猫沢さん、私も、この話は、始めて聞きました」

やはり、サンプル1号も、知らなかった。現代は、このような塩の大切さを知る話や、出来事は、広まる事もなく、生かされていないのだ。

相変わらず、塩は敵である。

そして、テラビト達の周りには、高カロリー、高脂質、糖質の食品達が、沢山あり、しかも、とても美味しく出来ており、魅力に取りつかれて過剰に摂取しているのだ。

この中には、長期間保存出来る薬品や、美味しそうに見える発色剤や、味を整える薬品が多く使われている。

お陰で、安価で安定した品質の物が、大量生産出来る仕組みだ。

これらの進歩した技術で造られた食品を、喜んで食べ、テラビトの体内外に、漬物石(遮断石)を大量に蓄積させ、あらゆる感覚を退化させている事に、多くのテラビト達は、知らないのだ。 

テラビト達が、この事に気づけば、漬物石の増殖を食い止め、減らし、私達の星も助かるのだが…うまくはいかないものである。  

なにせ、私達の星の危機が、テラビト達の行動と関係ある事など知らないのだから…

今回、塩の事を知ったサンプル1号は、積極的に、塩を取ろうと、別のサンプルテラビトから貰った天日塩を料理に使ったりしはじめた。そして、ヒマラヤ岩塩等を、購入してきたようだ。

味噌汁を作り、朝食に加える事を決め実践しはじめた。 

その甲斐があってか、以前よりも元気になり、ハードワークもこなし、作品を描くスピードも上がった。

もちろん、味覚異常も完治している。

風邪も、以前よりも引かなくなった。

サンプル1号は、大喜びである。

まだ、問題点は、沢山あるが、減塩をやめた事で、体の調子が良くなり、漬物石(遮断石)も、さらに少しづつ除去されていく、頼もしい限りである。

実験は、現在も継続中である。

[つづく]

2016年6月24日から7月6日の2週間、東京 高円寺、猫の額さんにて行われました個展が、無事に終了しました。

また、来年の同じ時期に、猫の額さんにて個展開催が決定しました󾬄よろしくお願いいたします󾠓

(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。

東京.高円寺[猫の額]さんでの個展とブログ小説の連動型で、お楽しみいただけます。


猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)

※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)

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個展連動SF猫物語[幻想の魚の秘密]シリーズ

東京 高円寺 猫雑貨&ぎゃらりー猫の額さんで、展開している。オリジナルSF猫物語を更新しています。

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