《大肉球曼荼羅 第2章⑤花の音》
台風が去ってから暑い日が、ぶり返してきましたね。
また週末は、寒くなるそうです。
画像は、2015年の個展作品、子猫時代の猫沢さん、猫庭博士、風さんです。左の隅っこに居るのは、花音さんのお母さんです。そっくりなんですよ。
猫庭少年は、おじいちゃんのお店のお手伝いをしています。
では、続きをお楽しみください。
《大肉球曼荼羅 第2章⑤花の音》
珍しい来客に胸踊る、猫沢さん、軽やかに奏でながら応接室へ
「おまたせしました。花音さん」
「こんにちは、忙しい時にごめんなさいね」
花音さんは、にこやかです。
「珍しいですね。どうしたんですか?」
「あのね、例の製菓店の事なんだけど…」
「ロドニアケーキの?」
「アンニャミラーのオーナーから、新店舗オープンパーティーに招待されて行ってみたの…」
「はい」
「あの子がいたのよ!」
「ロドニアですか?」
「そう、でも、なんだか薄気味悪かったの…」
「ほう?」
「見た目は子猫なのに行動はまるで老猫なのよ…子猫らしく振る舞ってたけど、とても違和感を感じたわ…」
「老猫?あんなに可愛いのにですか?」
「そうなの…」
花音さんは、表情を曇らせています。
「実は、猫谷君にも、彼の近辺を調べてもらったのですが…彼は出生登録のない存在だったそうです…」
「まっ!一体どういう事なのかしら‼?」
「考えられるのは、彼は精巧に造られたサイボーグなのではと…」
「サイボーグ?でも、私には、あの子は生身の体を持ってるように見えましたわ…」
「どちらにしても、気味が悪い…老猫のように見えたのは、一体どういう風に?」
「パーティーの最中、時々、物影に隠れては椅子に腰掛け、杖を手にしているの…その姿がまるで…」
「あんなにステージでピョンピョン跳ねてる映像を見るのに?」
「そう、変よね…?」
二人は、首をかしげながら、記念品として配られた、ロドニアの可愛らしい限定プロモーション ホログラム映像を見ていました。
「この画像見てくださる?新作なの」
美しいスィーツ達が、テーブルいっぱいに並んでいます。
「これまた!!」
「超一流の職猫を招いて、お披露目と試食があったの、みんな大喜びだったわ」
「花音さんは食べたんですか?」
「一応少しだけね。確かに、とても美味しいのよ…でも、材料は…」
「ウトゥサ…ですね。とにかく、ロドニア達が、この物質で何かを企んでいるのは確かですね…」
「ええ、もうすぐ、例のカフェが各地に一斉オープンするそうよ。これを食べた猫達は、気づかないうちに体がおかしくなっていってしまうわ…早く何とかしないと…」
「そうですね…花音さん、貴重な情報を、ありがとうございます」
猫沢さんは、お礼にと、猫庭博士から貰った500グラム程のミックスニャッツを渡しました。
なかなか手に入らない、貴重な深き森の木の実達です。
花音さん、目を輝かせ、帰ったら早速、ニャッツパニャーンやニャッツケーク等を作ると大喜び!!
「ところで猫沢博士…?」
「なんでしょう?」
「さっきから心地好い音楽が聴こえますが…」
「あぁ、私のここから出てるんです」
猫沢さんは、得意気に空中を弾きます。
「あらステキ!!」
花音さんは、目を輝かせます。
「凄いでしょ!」
そう言って肉球をヒラヒラさせながら空間を撫でると、まるで、見えない鍵盤を弾いているよう。
「ただ、問題がありまして…」
「問題?」
「止まらないんです…」
猫沢さんは、ハの字の眉尻が更に下がっていました。
「困ってるんですか?」
「はい、私が動く度に鳴るんです…どうやったら止まるのか…」
二人は、暫し考えました。
「猫沢博士、最初は、どうしたら鳴ったんですか?」
「鳴らすぞ!と意識して肉球を叩きました」
「では、その逆をやってみてくださいな」
「逆ですか?」
「止めるぞ!て意識してみるんですよ」
「あっ!」
ハッとして猫沢さんは、もう一度、肉球を叩いてみると…
「止まった…花音さん、ありがとうございます!!」
「よかったわ、ところで、どうしたんですか?なぜ、ここから音が?」
「実は、虚空庭園で会った紳士から音の鳴る円盤を受け取ったんです」
「まぁ!」
「それが、この中に入ってしまいましてね。オンとオフが分からなかったんですよ…」
猫沢さんは、困った表情をしながら、肉球をニギニギしています。
「あちらの世界から、こちらの世界に持ち込むなんて普通の猫には出来ない事ですよ」
「ですが、今回は出来てしまいました。どうやら、この楽器の取説だけは持ち帰れなかったようですがね」
「そんな物まで!?親切な方だったのですねぇ」
「ですからね、手探りですよ」
「あなた、元々手探りな方じゃないの、テラ調査の時に持っていった機器類、取説無視してたじゃありませんか」
イタズラにニコニコする花音さん
猫沢さんは、仕組みが明解になると、より一層奏でる音が安定し美しいメロディを生み出しました。
どうやら、奏でる者の心理状態にも連動しているよう。
ふと、ロドニアのホログラム映像に肉球を近づけると…
「!!!!!」
慌てて肉球を引っ込めました。
何があったのでしょうか?
「ひどいノイズだ…」
「え?私には、普通に聴こえますが…」
「頭が締め付けられるような気分になる、花音さんは大丈夫なのですか?」
「はい、でも、パーティー会場で、ずっと彼の歌が流れていた時、少々、頭がボンヤリしてしまいましたわ…」
「…そうですか」
猫沢さんは、謎の楽器のお陰で触れるものの「波」が、すぐ分かってしまうようになったのです。研究者冥利に付きますが、どうやら日常生活には厄介なよう…
「あ!そうそう、猫沢博士、これ食べてくださいな♪」
そうやって、取り出したのは、ほかほかの箱から出てきた美味しそうなもの
「これは?」
「私ね今度、新しい食堂を開くの、これは試作品!ニャーレンソウのスープとニョーガのご飯と他いろいろ!」
「良い匂いですね。食欲がそそります!」
「研究員の方の分もありますから、皆さんで召し上がって下さいね!」
なんと、花音さんは、早朝から研究所の食堂をコッソリ貸りて、朝から、ここにいたのです。
「お店を開くって…花音さん、あなた、まさか…!?」
「うふふ」
二人は、お互いの肉球を握りしめ、ぷにぷに(握手)を交わしました。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】SF物語を展開中です。
そんな楽しい猫の星の世界観第6弾を2019年、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表いたしました。2020年は、同会場にて、木元慶子さんとの二人展「出会いと旅立ち」を開催しました。来年も開催決定です。よろしくお願いいたします。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードや原画は[猫の額]さん「only-shop」さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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