星を繋ぐ猫達 第5章 《カルカナル磁場の歪み》

暑い日が続きますね。今年始めに仕込んだ、手作り味噌を、お味噌汁にしてみましたら、とても美味しくて、発酵食品って凄い!と思いました。

では、続きをお楽しみ下さい。

画像は、2015年個展作品です。物語上では、今回登場した、門田さん(テラビトサンプル2号)が、描いた作品と言う設定です。


《第5章 カルカナル磁場の歪み…》

「随分待たせたな。カルカナル磁場の影響で、時空の歪み、私達の覚醒に支障が出たと思える…」

寅次郎博士は、そう言いながら、真顔でお茶をすすりました。

「そうか…この星でのカルカナルの影響は、相当なものだな…本来なら、この星に来て、二十年を過ぎた時点で、覚醒し、落ち合う計画だったが…その頃に会いたかったわい…見てみろ、この皺を、すっかりじぃさんだぁ!」

門田さんは、カカカカと、笑いながら、深く刻まれた皺を指差し、出た腹を、ぽよんと叩きました。

「ははははは、私もだよ。今年で70だ。この星のホログラムボディの耐久年数は、驚くほど短くて脆い、通常の倍の速度で劣化していくんだ。気がついたら、この姿さ!」

寅次郎博士も、すっかり白くなった、自分の髪の毛をワシワシと掴みました。

「みちたろさ…いや、カミオンは、覚醒していたのか?」

「いや…」

「じゃあ、これは?」

門田さんは、不思議な顔で、日記を指差します。

「完全覚醒ではないよ。無意識下で書いた物だ。神楽師匠は、生前、私に、妙な言葉や文字が浮かぶと言って、よく見せられた口だ。その当時の私も覚醒してないもんだから、すっかりちんぷんかんぷんだった…」

「ぷぷ…私と同じだな…」

「どう言う意味だ?」

「私は、文字や言葉ではなく、イメージとして浮かんできていたんだよ」

「ほう?」

「頭の中に、映画のシーンのようなものが浮かぶのさ、私達の星の場面、他の星でミッションをこなしていた場面、地球でのミッションのミーティング風景…その時の会話や出来事が、イメージとしてね…私は、これは単なる妄想か夢だと思っていた…」

「成る程…いいところまで思い出していたのか…私は、どうだったろうか…?3歳くらいまで、以前の記憶があって、周りに[変な宇宙の話する変な子]と言われていたが、ある日ピタリと言わなくなった…周りに[やめろ]と言われ続けて、だんだん話せなくなっていたんだな…」

寅次郎博士は、当時の自分を振り返っていました。確かにその時までは、鮮明に覚えていたのです…

「そうだったのか…私の場合は、飯の種になった…この記憶の欠片を再現してSF画家として、仕事していたさ。本も何冊か出した」

そう言うと、門田さんは、押し入れからファイルを出してきました。

今まで手掛けた本の挿し絵や映画看板、それはそれは、胸踊る見事な宇宙ロマンを描いた作品から、息をのむような美しい女性の絵が、数冊のファイルに保存されていたのです。

「これは…見た事ある!これ、門田さんが描いたのか!?この絵、何かの雑誌に載っていたな…」

寅次郎は、まるで子供のような眼差しで、懐かしみ、ふと、数枚の作品に目が止まりました。

「あ…」

「懐かしいだろ、私達の故郷さ…私は、この作品で、賞を貰ったんだが…当時、何人かに「理由は分からないが、涙が出て仕方ない。懐かしい」と、言われた事が何度もある。彼等も、同志だったんだろうか…?あの時の彼らは…今、どうしているだろう?」

門田さんは、作品の前で、花束を抱え、満面の笑みで写る、自分の姿を眺めていました。年の頃は、30才位でしょうか。 

「これ門田さんかい?男前じゃないか。それにこの作品…無意識下で描いたとは思えない正確さだな…」

鮮明に思い出した二人は、懐かしんでいました。

「そうか、私の中から出てきた作品は…私の記憶そのものだったのだな…」

「門田さんは、いつしかそれを、現実には、ありもしない空想物語を描いている。と、思い込んでいた…」


「これが、地球でのカルカナル磁場の影響か…どれだけ対策を練っても、我々の宇宙意識や覚醒時期が歪められてしまう…」

門田さんは、悔しそうに言うと、煎餅を噛み締めました。

「先輩が言っていたな…[地球が一番、覚醒が難しい、なめてかかるな]と…こう言う事だったのか…」

ファイルを眺める寅次郎博士の視線に、黄ばんでいない、真新しい絵が飛び込んできました。

そして、吹き出した。

「どうした、風天(かざま)さん?」

「か、門田さん?こ、この猫の絵!?」

「あぁ!それか、そりゃ、1年前に遭遇した宇宙人だよ!」

「カンタスカラーナ星人だな?」

寅次郎博士は、ケラケラと笑っています。

「よく知ってるな。彼らは、とても紳士的な生命体だったよ。あの時、誰かを探していたらしいが、見つかったんだろうか?」

「見つかったよ」

「へ???」

門田さんは、寅次郎博士に、はてなマークをぶつけた。

[つづく]

 2016年6月24日から7月6日の2週間、東京 高円寺、猫の額さんにて行われました個展が、無事に終了しました。

また、来年の同じ時期に、猫の額さんにて個展開催が決定しました󾬄よろしくお願いいたします󾠓

(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。

東京.高円寺[猫の額]さんでの個展とブログ小説の連動型で、お楽しみいただけます。


猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)

※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)

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個展連動SF猫物語[幻想の魚の秘密]シリーズ

東京 高円寺 猫雑貨&ぎゃらりー猫の額さんで、展開している。オリジナルSF猫物語を更新しています。

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