星を繋ぐ猫達 第5章 [寅次郎博士と門田さん]

前回の更新から、随分、間隔が開いてしまいました。お待たせいたしました。

画像は、2016年個展作品の寅次郎博士です。

では、続きをお楽しみ下さい。


《第5章 寅次郎博士と門田さん》

「風天さん、あんた、みちたろさの弟子って言っていたな。私も昔、食べたが、ありゃぁ本当に旨い蕎麦だった。あんたの蕎麦もうまいんだろうなぁ…」

門田さんは、落語家のように、蕎麦をすする真似をして見せました。

「味は保証するよ。私は、今、小さな村の診療所もやっている。すっかり蕎麦打ちが本職になっているがね。あそこで働いていた頃よりも、楽しいねぇ…」

寅次郎博士は、かつて自分が勤めていた大病院の事を、思い出していました。

「あそこはエリート医者ばかりと聞いていたし、給料も相当良かったと聞いていたが…」

「確かにな…だが、私には…あの世界は合わなかったよ…そう言う門田さんは、もう、絵は描いていないのかい?」

「たまに描いているよ。数年に1回展覧会をする為に、時々、東京に出向くくらいで、あとは畑の守だ。ふもとの町の販売所で野菜を売ったり、山で狩りをしたりして暮らしてるさ」

「そりゃあいい。展覧会する時は、教えてくれ、見に行くよ」

二人は、地球人として生きてきた事柄を、軽く報告しあうと、美しいカンタスラーナ星人の話に移った、門田さんは、彼女について気にかかっていた事が、あったのです。

「この美女猫は、一体?」

「私の捜索任務を代々受け継いだ、[猫の私]の子孫に当たる一族の一人だよ。彼女は、私が星の猫達に伝えた全てを理解し、深く研究し、星の平和を護っていた猫でもあるんだ…そして見事に、私を探し当てた…」

「なるほど、あんたが、このチームのリーダーに、抜擢されたのが、なんとなく理解できたよ…」

門田さんは、この星に共に派遣される前に行ったミーティングで、役割分担をした時の事を思い出していました。

「私達の任務は、星の…いや、宇宙の循環を促す為の一筋の光、後に続く者達を育てていくのも任務の一つさ…」

寅次郎博士は、そう言うと、手の平に現れた光のボールを、クルクルと回していました。

「光か…確かに私達の仕事は、一瞬の光にしか過ぎない、小さな瞬きのようなもんだな…」

「この星のホログラムボディは、この瞬きのような一生を、実に長く感じるように設定されている重い入れ物だ…危うく、任務を忘れて星に帰る所だったよ。猫達に感謝しなくてはね…しかし、門田さん、この猫の絵から出てくるエネルギーが凄いのだが…」

寅次郎博士は、ジャッコ博士の絵から溢れる、光のような粒子が踊るのを眺めていました。まるで、再会を祝うような暖かな空間。

「ほう、風天さんにも分かるか?これを描いた時、とても不思議な感覚に包まれていたんだが…私は、この女性猫に会ってみたいのだが…会えるんかね?」

「…彼女は、とうに猫の星を離れたと聞いたよ…」

「…そうか…」

門田さんは、とても悲しそうです。

二人は、お茶をすすりながら、煎餅を頬張りました。

「門田さん、明日、また詳しい事を話す。次のミッションの打ち合わせをしよう」

「あぁ、蕎麦も楽しみにしているよ!」

「あ、そうそう、これを渡しておこう。猫達が用意してくれたシリアルバーだ、覚醒したばかりの脳は、エネルギー消耗が激しい。これを食べてゆっくり休んでくれ」

寅次郎博士は、猫沢さん達から貰った、シリアルバーを数本、手渡しました。

「ほー!こりゃありだかい。ちょうど、腹へって、眠たくて仕方なかったんだよ…ありがとう」

「私は、そろそろ、これで失礼するとしよう。明日、迎えに来るから!」

「じゃな」

「ちょっと待ってくれ!」

門田さんは、隣の小屋に行くと、何やら持ってきました。

「これ、うちの畑の野菜だ!持っていってくれ」

米袋にいっぱいの、秋の収穫野菜を渡して来ました。

「あぁ、ありがとう」

寅次郎博士は、そう言うと、車に野菜を積み込み、沈みがかった夕日を眺めながら、自宅に向かうのでした。

[つづく] 

2016年6月24日から7月6日の2週間、東京 高円寺、猫の額さんにて行われました個展が、無事に終了しました。

また、来年の同じ時期に、猫の額さんにて個展開催が決定しました󾬄よろしくお願いいたします󾠓

(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。

東京.高円寺[猫の額]さんでの個展とブログ小説の連動型で、お楽しみいただけます。


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※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)

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個展連動SF猫物語[幻想の魚の秘密]シリーズ

東京 高円寺 猫雑貨&ぎゃらりー猫の額さんで、展開している。オリジナルSF猫物語を更新しています。

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