星を繋ぐ猫達《第3章 頼もしいナノマシン達》
春な今寒いですね。
ただいま6月の個展にかけて 準備中です。今回は、二つの物語を発表します。猫の星カンタスカラーナの過去と現代を舞台に繰り広げられます。お楽しみに!
1枚目の画像は、ナノマシン[カルカン]と、猫伊豹之助博士
2枚目の画像は、寅次郎博士です。
では、お楽しみ下さい。
《第3章 頼もしいナノマシン達》
皆がリンゴパイを頬張っているころ、猫沢さんは、鞄から小さな瓶を取り出しました。
そう、例のナノマシン達です。それに気づいた寅次郎博士、
「それは、なんだい?」
「テラで採取したナノマシンです」
「ナノマシン?」
「はい、こちらはテラビトに扮した異星人達が、何かの目的で放った物ですが、昔、虎之助博士時代のあなたが作ったナノマシンと、働きが少しだけ似ていました」
猫沢さんが、ナノマシン2体の姿を、ホログラム模型を映し出しました。
「以前の私が開発した物と似てる?」
「…はい、ナノマシン[コルソー]に似たストーンブロック(遮断石)除去する能力を持っています」
「コルソーに!?」
「はい、私達は、テラビトのストーンブロック(遮断石)を除去する為、かつて、猫達のストーンブロックを破壊したナノマシン[コルソー]を使いましたが、すぐに壊れてしまったのです。カルカナル磁場の影響だと思われます…」
壊れたコルソーの画像を見せました。寅次郎博士は、とても寂しそうな表情を見せました。
「それで、あなたの子孫の豹之助博士が、改良し、最新型のナノマシン[カルカン]を開発ました」
猫沢さんは、赤いナノマシン[カルカン]を見せると…
「ほう、かわいいな。カニみたいだな」
「現在、カルカン達はテラ中を飛び回り働いています。そして、この謎のテラビト達が放った二種類のナノマシン達も、テラ中に散らばっています」
かわいらしいタコのようなナノマシンと、カニのようなナノマシンを見て、微笑む寅次郎博士。
「君達は、既にナノマシンを放っていたのか…驚いたよ。そして、こちらのタコみたいなナノマシンを放った異星人達は、おそらく私達と似たような役割を持っているのかもしれないな…」
「表面上は、地球侵略とか言ってテラビト達に堂々と宣言しているようですが、本来の目的は別のようですね…」
猫沢さんは、真面目な表情で答えます。いえ、ちょっと吹き出しそうで堪えています。
「地球侵略?解りやすいジョークだね。まぁ、私達の星のルールでは、お互いの任務は干渉せずに、目的を果す事だ、このナノマシン達が私達の目の前に現れたのも、何かの計らいだろう…」
小瓶に入ったナノマシン達を、高性能電子虫眼鏡で覗く寅次郎博士は、ちょこまかと動く、かわいらしい姿を見て和んでいました。
「ナノサイズの彼等なら、こんな小瓶など、簡単にすり抜ける事が出来るだろうに、律儀なナノマシン達だね。どこのどなたか知らないが、感謝するよ」
寅次郎博士は、どこの星の者達か分からない彼等に感謝しました。
「あの、実は、ある程度調査済みでして…彼等は、ステージ上で音楽を奏で特殊な周波数を、観客に浴びせていました」
猫谷エンジニアが、申し訳なさそうに伝えると、寅次郎博士は、
「特殊な周波数…そうか、音を操る者達か…頼もしいな」
寅次郎博士は、冷静です。これまで、幾度もの星で任務を果たして来ました。様々な星から、いろんな役割を持ち、様々な姿でやって来るのです。それぞれの役割を果たし、いずれ、星に帰っていくのです。時にコンタクトを取り協力し合うこともありますが、基本的には単独です。
なにはともわれ、別の星からのレスキューのような、地球人達の体内外に蓄積するストーンブロック(遮断石)を破壊するナノマシンの存在は、心強いのです。
「既に、ナノマシン達が働いているのなら、作業は進みやすい。カンタスカラーナでの私の智恵は、今も生かされているのも嬉しい事だ」
いつの間にか、周りが既に必要な物や事が整っていた事に気づいた寅次郎博士は、驚きながらも、にこやかになり、紅茶を口に含み香りを楽しんでいました。
猫沢さんは、次の重大な報告をしなければと、つい先日カンタスカラーナから送られてきた、報告書を取り出しました。
「あの、寅次郎博士…」
「なんだい?」
「実は…」
猫沢さんの重い表情に、猫達は、息を飲みました。
「ウィラード2世が、生きているとの報告が、カンタスカラーナから届きました…」
猫達が、騒然となり、ガタガタと震える者もいました。
窓際に座っていた、屋敷猫の長、アルハンゲルが目を丸くして、走ってきました。
「空(くう)くん!それは本当か!?」
アルハンゲルが、声に出して言いました。空くんとは、猫沢さんの下の名前です。
「アルハンゲル…お前、人間の言葉が喋れたのか!?」
ウィラード2世が、生きている事にも驚いたのですが、 アルハンゲルが人間語を目の前で話した事が一番驚いたのでした。
「寅次郎博士、驚かせてすみません。後程、ゆっくり説明します」
アルハンゲルは、何か、とても動揺しています。
「一体、どういう事なんだ?彼は、あの時、とうに死んだ筈だ…」
アルハンゲルは、猫沢さんに、にじり寄りました。
「はい…私も、あの時に、ケイオス-ハーオス時代の貴方と、この目で見ました…今回の件は、生きていたとか生き延びていたと言うよりも…蘇ったと言った方が正しいです…」
「蘇っただと…?」
ウィラード2世、かつて、カンタスカラーナを支配した一族、カルカナル族の中心的猫…初代ウィラード1世よりも残忍で、恐ろしい猫なのです…
寅次郎博士も、虎之助時代に、若きウィラード2世の事を知る人物です。
寅次郎博士は、初代ウィラード1世と、戦った記憶はありますが、当時、まだ、若造だった2世の残忍さは、小耳に挟んでいました。猫庭博士の祖父達が、随分、苦しめられていたと記憶していました。
一体、カンタスカラーナでは、今、何が起きているのか…!?
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、昨年、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表。2015年6月5日~17日に開催いたしました(^O^)
2016年の6月も、幻想の魚の秘密.第三弾を展示決定!既に準備は進んでいます。お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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