星を繋ぐ猫達《第3章 アルハンゲル》
熊本、九州地方で起きた、大きな地震災害、被害にあわれた方々の、いち早くの復興と、ご無事をお祈りいたします。そして亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。
現在、私の親戚の自衛官の方が、昨日、熊本に到着し救助活動を行っています…。
一枚目の画像は、アルハンゲル。二枚目は、ケイオス‐ハーオスです。
では、お楽しみ下さい。
《第3章 アルハンゲル 》
そわそわ落ち着かないアルハンゲルを、寅次郎博士は、優しく呼び寄せました。
歳は老いていますが、瞳の美しい凛々しいロシアンブルーの猫です。彼は、かつて、カンタスカラーナで生きた猫。カルカナル時代崩壊の最終段階の時、カルカナルの本拠地を破壊し、猫達を救った英雄猫です。
現在は、地球人の風天寅次郎博士と共に、地球猫として、生きているのです。
アルハンゲルは、寅次郎博士の元に駆け寄ると、流暢な人間語で話し始めました。
「私の、カンタスカラーナ時代の名は、ケイオス-ハーオス-Wです。あなたが、カンタスカラーナの虎之助博士時代に、一度だけ、お会いした事があります」
「一度だけ?」
「はい、私が子供の頃…お祭りのステージで、あなたが、ロボットショーをやった時…少しだけお話した事があります。その時のロシアンブルーの子猫です」
「ロボットショーの時に会ったロシアンブルーの子猫…?」
寅次郎博士は、思い出そうと必死です。
「私は、あの時、あなたに[科学と言うものは、世のために役立て、そして楽しむ物。決して苦しめたり、殺めたりするような使い方をしてはいけない]と…教えてくれました」
アルハンゲルは、目を輝かせます。
「ロボットショーか、懐かしなぁ、確かにそう言った覚えがあるが…君の事が思い出せない…」
寅次郎博士は、とても申し訳なさそうな顔で、アルハンゲルを見つめました。
「思い出せなくても、良いのです。ほんの数分の事でしたから…私は、その時以来、考え方が変わりました。良い世の中を作りたかった…しかし、父は、そんな私を認めてくれはしなかった…」
アルハンゲルは、とても悲しそうな表情です。
「君のお父さんは、どんな猫だったんだい?」
「…とても厳しく、皆に恐れられた、貴方とは全く考え方が真逆な科学者でした…」
悲しい表情に見え隠れする、怒りの感情が、部屋の周波数を変えました。それを感じた猫達は、一瞬、ブルッと震えました。
「科学者か…私とは真逆の考え方……か…!?あ!」
寅次郎博士は、何故だかハッとしました。まさかとは思いましたが…この事を今、決して口にしてはけない事だと、言葉を飲み込みました。
「そうか…君はどうして、私を追って、この地球にやって来たのかね?」
「父を助けて欲しいのです…」
「助ける?」
「私の父は、亡き後も、恐ろしい魔物に取り憑かれたまま…今もカンタスカラーナで、恐ろしい亡者となって、さ迷っているのです…貴方なら、きっと父を助ける方法を知っていると、必死に追い掛け、この星へ産まれ落ちました」
アルハンゲルは、決死の覚悟で、地球までやって来た事を告白しました。
「そうか…ちょっと失礼して、君の記憶の中を覗かせてくれないか?」
アルハンゲルは、驚きましたが、静かにうなずくと、寅次郎博士は、アルハンゲルの額に手のひらをあてました。猫達は、息を飲みます。
「!?」
寅次郎博士は、一瞬、表情がこわばりました。アルハンゲルが、ケイオス時代の記憶の中に表れた映像には、彼の父親の恐ろしい姿が映っていたのです。
「やはり君は…そうだったのか…解った、君のお父さんの呪縛を解く方法を一緒に考えよう。そして、君を解放させよう…」
それを聞いたアルハンゲルの表情は、パァッと明るくなり、涙をポロポロとこぼしました。
ハッと何かを思い出した寅次郎博士は、
「アルハンゲル、ちょっと待ってなさいね」
そう言うと、寅次郎博士は、屋敷内の物置部屋へ何かを探しに行きました。
猫達は、アルハンゲルのかつての、カンタスカラーナ時代の事を、詳しく知りません。知っているのは、ただ、カルカナル時代を終結させた英雄猫と言う事を知っているだけで、生い立ちや素性等、一切知らないのです。
多くの謎を残したまま、カンタスカラーナの英雄として語り続けられてきた猫です。
10分位して、寅次郎が、何かを担いで戻ってきました。
「まさか、これが役立つ時が来るとはな…」
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】シリーズ。架空のSF物語を展開中です。
猫の星の物語、第二弾を、今年も東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表。2015年6月に開催いたしました(^O^)
2016年の6月も、幻想の魚の秘密.第三弾を開催いたします。ただいま準備中です!お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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