星を繋ぐ猫達 《第3章 奏でる学者猫》
先月末の、意識消失して倒れたのをきっかけに、先日、胃カメラ検査を初体験しました。自分の内側を見るのは初めてでした。小さな胃潰瘍と逆流性食道炎が見えましたよ。大きな疾患はなく安心しました。
では、物語の続きを、お楽しみ下さい。
画像は、在りし日のアルハンゲルの姿、カンタスカラーナ時代の、ケイオスです(新作の一部分です)
《第3章 奏でる学者猫》
寅次郎博士が、物置部屋から持ってきたのは、小さな丸いケース、一体、この中にはは何が入っているのか?猫達は、興味津々です。
「この家を譲って貰った時に、物置部屋の物も一緒に貰ったんだがね。神楽師匠に「この家の前の持ち主の物だが、好きにしていい」と言われたんだ、なんだか、これだけは、手放してはいけないような気がして…ずっと置いておいたんだよ」
寅次郎博士は、埃をはらいながら、ケースの蓋を開けますと、そこには、変わった形の弦楽器が出てきました。竪琴のようです。
「これは、ライアと言う弦楽器だよ。アルハンゲル…いや、ケイオスくん。君は、カンタスカラーナでは、吟遊詩人として活躍していたみたいだね。当時の君が持っていた楽器にひじょうに、よく似ているんだ、使ってみるかい?」
寅次郎博士は、ライアを取り出して、ちょっと弾いてみしたが、長年使用されていなかったせいか、音が狂っています。歪んだ音色に我慢出来なかったアルハンゲルは、思わず、ライアに近づき調整しようとしますが、地球猫の腕ではうまく力が入らず、全く出来ません…アルハンゲルは、ガックリ肩を落としてしまいました…。
それを見ていた、猫沢さんは、ちょこちょことやって来て、小さな手で、丁寧に調節してみました。
猫沢さんは、周波数研究学者であり周波数医師。楽器も扱えますから、チューニングはお手のものです。
ライアは、弦が古く今にも切れてしまいそう、あまり強くは弾けませんが、優しく弾くと、再び美しい音色が甦りました。音階は地球で使われている音階ではなく、カンタスカラーナの音階です。しばらくポロンポロンと試し弾きすると、コツを掴んだのか曲のようなものを弾き始めました。
思わず拍手が沸き上がります。
「この曲は…私の曲…」
アルハンゲルが、涙を流しています。カンタスカラーナ時代、吟遊詩人として旅をしながら奏でた曲を、猫沢さんは、子猫時代に何度も聴き込み、すっかり覚えていたのです。
「ケイオスさん、弾いてみますか?」
猫沢さんは、アルハンゲルの前足を優しく、弦に近づけると、アルハンゲルは、思わず引っ込めてしまいました…。
「空(くう)くん、すまない…地球の猫の姿では、君達と体の構造が違う…この腕では無理だ…」
空くんとは、猫沢さんの下の名前です。アルハンゲルは、肉球を見つめ肩を落とし切なそうに答えました。
それを見ていた寅次郎博士は、何かを閃いたのか、今度は、ミニイクサフィーゴのある大広間へ行ってしまいました。
しばらくして、寅次郎博士は、ミニイクサフィーゴの足下に付いていた金属片を手に戻ってきました。
「私が、これで、君にピッタリな楽器を作ってあげよう!」
寅次郎博士は、笑顔で、ちょうど良い形の金属片を眺めていました。一体、どんな楽器を作るのでしょう?
「猫沢くん、何か弾いて聴かせてくれないか?久しぶりに、カンタスカラーナの音楽を聴いてみたいなぁ。アルハンゲルも、弾けなくてもいいから好きなように弦をはじいてごらん」
猫沢さんはアルハンゲルに1ヶ所、弦を弾かせ、奏で始めました。
美しい音色が、部屋いっぱいに広がり、心地よいメロディーに猫達は、うっとりしています。猫庭博士が、目を潤ませています。
「まさかテラで、この曲が聴けるなんて…」
猫庭博士が、幼い頃、両親が営んでいたレストランでは、ケイオスさんのコンサートが定期的に行われていました。
多くの猫達が、 彼の音楽に感動し心打たれていました。猫庭博士も、その中の1人なのです。猫沢さんも彼の音楽が聴きたくて、よくレストランへ通っていました。
そして、猫沢さんは、古くから伝わる、東の猫の民の伝統音楽を弾き始めます。寅次郎博士は、懐かしそうに目を閉じ聴き入っています。
「猫沢博士…素晴らしい特技を、お持ちだったのですね」
派遣員メンバーの中で、2番目に若い、猫の少女 ミッシェルが、猫沢さんに話し掛けました。彼女は、美しい歌声の持ち主で、古代地球猫の血を引く猫です。
「私が、この世界(宇宙)の、あらゆる音色や振動や光、周波数に興味を持ったのは、ケイオスさんのお蔭なんだよ。彼の音楽に出会わなければ、私は、このテラへ来る事はなかっただろう…」
ライアを奏でる、猫沢さんは、とてもリラックスしていて、優しい表情です。アルハンゲルは、立派に成長した、猫沢さんと猫庭博士を見て、涙を浮かべていました。
猫沢さんが、奏で終わると、拍手喝采で部屋の中がパッと明るくなりました。同時に弦が脆く切れました。
「寅次郎博士、弦を張り替えておいてほしいのですが…」
「あぁ、村の中にギター工房があるから、頼んでおくよ。猫沢くん、素敵な演奏をありがとう」
アルハンゲルが、猫沢さんの元に駆け寄り、
「空くん、素晴らしかったよ。私の曲を完璧に演奏出来るなんて驚いたよ!」
と、称賛の言葉を伝えました。
「ありがとうございます。時々、研究音源発表会の時に演奏させてもらっています。あなたの作った曲は、今も星の猫達に愛されていますよ」
猫沢さんは、少し照れながら、はにかんでいました。まさか、遠い星の地球で、演奏するとは夢にも思っていませんでしたから奏でた本人もビックリしているのです。猫沢さんは、研究の傍ら、様々な周波数を使って作った音源を、研究成果の発表会で披露していて、星の猫達に大評判なのです。
「ありがとう…」
アルハンゲルは、猫沢さんにお礼を言うと、安心したのか、寅次郎博士の横に静かに、ソファーに座りました。
「あ!そうそうそう!昨日、師匠のお孫さんから、凄いものを預かって来たんだ!」
寅次郎博士は、再び、立ち上がり、書斎へ行ってしまいました。
[つづく]
(※このブログでは、ブログ小説【猫沢さん作品[幻想の魚の秘密]】架空のSF物語を展開中です。
物語と共に、登場猫達の紹介や、作者と猫達との交流を中心に発表しています。
そんな楽しい猫の星の世界観第二弾を、昨年、東京.高円寺[猫の額]さんでの個展にて発表。2015年6月5日~17日に開催いたしました(^O^)
今年2016年の6月も、幻想の魚の秘密.第三弾を展示決定しました!
会期は、6月24日(金)~7月4日(水)会期中の数日在廊も予定しています。お楽しみです。
猫沢さん作品の挿絵のポストカードは[猫の額]さんでも購入出来ますよ(^O^)
※この猫物語は、私の好きなミュージシャン平沢進氏の楽曲をBGMに流しながら浮かんだインスピレーションを元に綴り上げる実験的SF物語制作の一環です)
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